滞納・未払い・差し押さえ

無保険者は悲惨!国民健康保険の義務化で3つのペナルティを回避する

国民健康保険は、自営業者や無職の方などが絶対に加入しなくてはいけない医療保険です。ただ人によってはここ数年病院を利用した記憶がなかったり、あまり保険を利用していないと感じている方もいると思います。

自分自身や家族の為に必要だからこそ国民健康保険に加入していると思いますが、やはり保険料は大きな負担です。必要な時だけ利用したいと感じる事は、当然だと思います。

なぜ国民健康保険は義務なのでしょうか?国民健康保険の理念や役割を理解し、保険制度の意義について詳しくお話ししていきたいと思います。

国民健康保険をなぜ支払う義務がある?基本概念と罰金の把握

国民健康保険は、会社員や公務員が加入している健康保険や共済保険とは別の保険制度です。加入者が納める保険料や国の補助金を資金源にして、運営されています。

なぜ国民健康保険は義務なのでしょうか?入るか入らないかは、国ではなく個人が決めるべき問題です。それなのに、あくまでも強制にしているのはなぜなのか?それには、国民健康保険の理念と4つの概念を理解する事で見えてくると思います。

また国民健康保険に加入しない場合、罰則を受ける事になります。加入に対して、義務だけでなく罰則まで用意している訳です。国民健康保険の成り立ちと罰則について、重要なのでお話ししていきたいと思います。

厚生白書と憲法から見る、国民健康保険の2つ理念を知る

1961年に国民健康保険法が改正され、国民皆制度が確立されました。これにより全ての国民が何かしらの保険に加入し、怪我や病気をしても医療的処置を速やかに受けられるようになりました。

例えば「病気になっても、病院の世話にはならない」「どのように生きるのかは個人の自由」と言う、意見を耳にする事があります。確かに、健康や保険についての見解は個人の自由です。ただ、国民皆制度とは相互扶助の概念によって成り立っています。

相互扶助とは、生き物や社会全体は競争や闘争などではなく、助け合う事で進歩すると言う考え方です。現代の人達は競争社会を生きぬき、社会的な進歩してきたので個人の自由だと言われると、ついうなずきたくなるのです。

しかし、助け合う事もまた社会に必要だと言う相互扶助の概念のもと、国民健康保険は成り立っている訳です。

昭和35年(1960年)の厚生白書の第一章の序説に以下のような記載があります。

<厚生白書、序説より>
市場経済は競争原理のせいで強いものが勝ち、弱いものは淘汰されるのは仕方がない。しかし、この構造から離れ病気や障害、理由があって弱者となっている人達を放置するのではなく手を差し伸べるべきである。国民には、この考えを共有する優しい気持ち(精神性)が必要である。

また、憲法25条によって人は最低限の生活を享受する権利を持っています。

<憲法25条>
全ての国民は、健康面や文化面で最低限の水準を営む権利を持っています。国は、生活面、社会保障、公衆衛生などの向上に努めなくてはいけない。

助け合いの精神と、憲法によって国民健康保険は成り立っている訳です。

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相互扶助の精神!国民健康保険の4つの基本概念を理解する

国民健康保険は、社会保障の1つです。社会保障の基本的な概念は4つあり、それらは国民健康保険を支える理由にも全て当てはまっています。

①セーフティネット

最悪な状況を、未然に救う安全網の意味で使われています。疾病や負傷に備えた医療サービスや高額な入院費や手術代を補助してくれるのが国民健康保険です。

実際の医療費は、大変高額です。もし国民健康保険がなければ、1回の診察で数万円掛かるケースもあります。それを負担し、日常生活に負担が無いようにしてくれるのも健康保険なのです。

また、滞納などをしたとしても数カ月で保険証が利用できなくなる事はありません。利用制限はつきますが、国民健康保険は加入者がいつでも最低限の医療サービスを受けられるようにしています。だからこそ、その運営費である保険料は支払っていく義務と責任が生じる訳です。

②所得の再分配

通常、所得分配は格差の縮小を狙った機能です。国民健康保険は、加入する地域によって保険料が変わります。これは、その地域の医療費をその地域の住民で分けているからです。

この際、収入が高い方ほど支払う保険料が高額になります。これが相互補助の考えです。収入の差によって受けられるサービスに差が出来るのではなく、全ての人が平等にサービスを受けられるようにしている訳です。

また「健康な人」は医療費自体を使いませんが、徴収され続けます。しかしそれがあるからこそ、「病気がちな人」を診察する基盤が整う訳です。お金に余裕がある人や健康な人が医療サービスを支えるこの構造も、所得の再分配の1つと言えます。

構造の維持には、保険料の安定的な回収が当然ですが必要となってきます。維持する為にも、国民健康保険を支払い続ける必要性がある訳です。

③リスク分散

医療保険制度はあらかじめ少ない保険料を負担しておく事で、実際に病気の治療や入院費などが必要となった時、比較的低い負担で受けられるようにしてくれます。将来一気に負担しない為に、「今」少ない金額を掛けリスクを分散する事は大切な視点です。

その為には、国民健康保険に加入している全ての人が保険料を納めなければいけません。

④社会安定及び経済安定・成長

国民健康保険が無く、収入に応じて受けられる医療サービスに差が出来れば社会システムに大きな影響が出ます。例えば、適切な治療が受けられず体調がすぐれない状態の労働者があふれた場合、経済はうまく回りません。

また、体調がすぐれない方や病気がちな人は精神的に不安定になりやすいものです。その為、窃盗や暴力などの犯罪が増える可能性があります。適切な保険制度が社会の安定を担う面もある訳です。故に、国民健康保険は加入者1人ひとりが、支払っていくべき義務と責任を持っているのです。

入っていれば医療費7割免除!しかし、入っていなければ罰金

国民健康保険は、医療費が3割で済む保険です。つまり、7割の部分は国民健康保険が負担してくれている訳です。これは大変助かるサービスです。

では、実際に国民健康保険に加入していないとどうなるのでしょうか?例えば国民年金の場合は、国民年金法(12条、13条)によって30万以下の罰金を科す規定があります。しかし、国民健康保険には法的な罰則はありません。

但し国民健康保険を運営する各自治体によって、加入していない場合は10万以下の罰金を処せられる事があります。

これは条例によって過料として規定されています。また、国民健康保険に加入していないのに何らかの不正行為によって病院などで医療費を7割免除した場合は、免除した額の5倍の金額以下の過料を行う規定もあります。

病院で払う金額は、数千円と決して安くありません。ただ、これはあくまでも3割であり、後の7割は免除されているだけなのです。不正行為でこの7割部分をさらに5倍にされ請求されると大変つらい状況になると思います。

こういった罰則を避ける為にも、国民健康保険に加入するべきなのです。

国民健康保険の義務化は必要?保険証の重要性を知る

日本に住所を持つ方は、何らかの医療保険に加入する義務があります。それが国民皆保険制度です。また上記でお話しした通り、制度の成り立ちや運営理念を鑑みても義務化して支払う事にある程度の納得は出来ると思います。

しかしそうは言っても、加入する事を強制されているので引っ掛かる点があるかもしれません。そこで国民健康保険が持つメリットやデメリットについて詳しく見ていく事にしましょう。

国民健康保険は医療保険の1種!社会保険を確認する

まず国民健康保険は、数ある保険の1種類にしかなりません。

①医療保険
②年金保険
③雇用保険
④労災保険
⑤介護保険

まず、この5つはまとめて社会保険と言います。そして国民健康保険は、①の医療保険の1種となります。国民皆保険制度は、①の医療保険に国民すべてが加入する事を義務付けた制度です。

①の医療保険には、健康保険、各種共済保険、船員保険、後期高齢者医療制度と国民健康保険の5つがあります。

国は全ての保険に補償していますが、見ても分かるように多種多様な保険がある為、国民健康保険だけに手厚い補償をするという訳にはいきません。だからこそ、それぞれの保険料こそ重要な運営費となります。

故に国民健康保険の運営上、支払いの義務を守る必要がある訳です。

7割免除!保険診療!高額療養費!国民健康保険のメリット

国民健康保険の特徴は、3つ挙げらます。

  • 国民健康保険は、医療費が7割免除される

保険証さえ持っていれば、全額が1万円の治療も、3000円で受ける事ができます。例えば、歯医者などは多くの方が活用されると思いますが、保険証が無ければ完治まで大変大きな金額を負担する事になるのは容易に想像できると思います。

医療費、入院費、手術、出産など人生と言う期間で考慮すれば、なくてはならないサービスです。

  • 保険証が有れば、保険診療で診療が受けられる

保険が適用される診療を、保険診療と言います。この反対で、全額自己負担となるのが自由診療です。もし保険証が無ければ、独自の薬や治療法を医師が選択する事も可能となります。すると、かなり大きな負担となります。

国民健康保険に加入しているからこそ、最低水準(世界的は日本の医療は高水準です)の医療を低価格で受けられる訳です。

また、場合によっては保険証が無いと診察を断られるケースもありますのでご注意下さい。

  • 高額な手術や治療の、高額療養費控除として申請する事が出来る

手術に30万掛かった。長期的な治療が必要で、総額で50万以上掛かるなど、高額な医療費を申請する事によって控除する事が可能です。自己負担額が一定を超えた時、国民健康保険から医療費の給付を受ける事が出来ます。

手続きも簡単で、市役所などで限度額適用認定証をこうして貰いに病院の窓口へ提示するだけです。国民健康保険に加入していないと、生活基盤を揺るがす負担になる可能性もあるので注意しなくてはいけません。

病院に行けなくなる!無保険者の辿る末路を知る

保険証を持っていない方を、無保険者と言います。これからお話しする事は、少しショッキングな内容かもしれません。しかし、現実に起こっている事だと言う事もご理解して頂ければと思います。

<3人の子共を抱えて、気管支炎の発作で亡くなる>
ある男性はタクシー会社を退職後、職を転々としていた為、国民健康保険に未加入でした。子供の生活費や学費などに頭がいっぱいで、自分のコトは後回しでした。未加入なので、病院に行き辛かったのもあります。

我慢して仕事を続けたため、ストレスや疲労から気管支炎の発作を起こしてしまい、病院に運ばれた時はもう手遅れで、そのまま亡くなると言う残念な結果になってしまいました。

<リストラされ貯金が無くなり無保険者、肺がんが進行していて入院するも亡くなる>
無保険者にありがちなのが、ガマンです。保険証が無い為、医療費や治療費の事が気にかかりどうしても病院に行くことができず、病院に来たときには手遅れと言う事もしばしば見受けられます。

※他にも全日本民医連から、2016年「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」報告【無保険・資格証・短期証】34事例というレポートがダウンロード出来るので参考にして下さい。

保険証が無いと言う事は、2つの傾向を強く持つ事になります。

◆保険証が無いと、全額負担は辛いので診察が受けられない(1回で数万円かかる)
◆保険証が無いので、できるだけガマンする(結果、病院に行った時には手遅れ)

個人の意思は尊重されるべき事です。

しかし、国民健康保険が義務化されているのは、こういった無保険者が辿る悲劇を無くすことが大前提にある事を知らなくてはいけません。

保険証の無い方は、気軽に病院に行けず耐えられなくなってから行く傾向が強いです。その行為は、病気の悪化や最悪の場合は死に繋がってしまいます。

こういった事を個人の意思だけに任せず、国として守ると言う意味で「義務化」している事を理解すれば、支払う事に対してかなり好意的に見えるのではないでしょうか。

国民健康保険料は上がり続ける!義務化こそ予防策になる

国民健康保険は、平成30年4月から運営方法が一部変更となりました。被保険者である、国民健康保険の加入者にとって何が変わったのでしょうか?

国民健康保険制度の変更した背景と、今後の医療と医療費についてお話ししていきます。

平成30年から国民健康保険は変わる

国民健康保険は、平成30年4月から運営方法に2点変更点があります。

<変更点は2つ>
1.今まで市町村での運営だったが、都道府県も運営に参加
2.財政支援として、補助金が3400億になる

つまり、これは財政基盤強化策として行われている訳です。裏を返せば、国民健康保険の滞納問題などを考えれば当然の流れなのかもしれません。

2025年には61.8兆円!医療費は上がり続けていく

まずは、これまでの全国の医療費を1995年から2025年までどのようになっているのか、見てみましょう。

1995年 27兆円
2005年 33.1兆
2015年 42.3兆
2025年 61.8兆

見て分かるように10年ごとのスパンで見てみると、想像する事が難しいほどの桁で医療費が上がっていくのが分かると思います。これはあくまでも全体の医療費なので、国民健康保険のみならもっと安い筈だと意見が出るかもしれません。

確かに、その通りです。

実際、2015年の国民健康保険費は、9.9兆となります。

およそ、20%弱の割合となります。この割合はほぼ変わりませんので、2025年は14兆ほどに膨れ上がる事が想像できます。上記で挙げた、補助金の3400億がどれだけの影響があるのかは各人の判断にお任せします。

重要な点は、年々上がる医療費に対して都道府県が関与し補助金まで出た時、健康国民保険の保険料がどう影響するのかと言う点だと思います。

厚生労働省が、北海道と宮城県を除く45都府県、1524市区町村から回答を得た、1人当たりの保険料がどう変わるか 平成28年度の保険料と比較したデータが下記のようになります。

保険料が下がる 828市町村(54%)
保険料が上がる 656市町村(43%)
変わらない 40市町村(3%)

今までは市区町村で運営していた為、となりの区に引越すと保険料が違ったりしましたが、今後はそのような格差がなくなってきます。しかし財政を強化しても、実際に支払う保険料が上がる方もいる訳です。

これからは、高齢化社会、医療を受ける人が増える社会であり、それを支える世代の減少によって増々医療費は上がっていきます。それに伴い保険料も上がる訳ですが、相互扶助の考えを実践すれば、1人ひとりが国民健康保険の分担するため保険料が安くなる可能性があります。

また重要な事ですが、体調が少しでもおかしいと思った時に病院に行き治せば短期間で通院も済みます。しかし、無保険などで病院に行くことが遅れ長期間治療に掛かってしまえば、それだけ多くの医療費が必要となる訳です。

無保険者は治療費を気にして、病気が悪化する傾向にあります。その為、保険の義務化によって誰もが保険証を持ってさえいれば、治療費を気にする事無く気軽に病院で診察ができ早い段階で治療が出来ます。

この治療の長期化や悪化を「予防」する為にも、国民健康保険は義務化して加入を強制する意義はあるという見方も出来る訳です。

国民健康保険の義務を果たさなければ、生活に支障が出る!

最後に、国民健康保険に未加入だったり加入していても滞納したりしている事で、結局どうなるのか?お話ししていきたいと思います。

病院に通えなくなるだけではなく、他にもペナルティを課される事になります。

義務を怠った時の悲劇!3つのペナルティを把握する

保険に未加入だったり滞納したりすると、3つの結果が待っています。まとめてしまえば、以下の3つを回避する事こそ、国民健康保険を支払う理由となります。

①病院での支払いが10割になる
②滞納した場合は差し押さえ
③病気の悪化や家族の健康に影響する

上記でもお話ししてきましたが、医療費が全額自己負担となります。そのせいで病院へ行く事が遅れたり、遅れた分治療費も高額になったりして生活に大きな悪影響を及ぼします。

保険料の滞納は、残念ながら無くなりません。時効は5年と期間がありますが、督促状が届くたびにそれまで経過した時間はリセットされ届いた日から5年と延長されます。その為、ほぼ時効は望めず滞納金は払わなくてはなりません。

また滞納が長期化すれば、給与や預貯金の差し押さえとなるケースもあります。

これも上記でお話ししてきましたが、未加入や滞納で国民健康保険を利用しにくい状況だと、病気の悪化や長期化、または家族の健康に影響が出て家庭の崩壊にもつながります。

義務を怠る事で、健康面だけではなく生活自体に影響が出る事も十分考慮する必要がある訳です。

国民健康保険を義務化する事で、1人ひとりの意識付けが明確になる

病気の悪化や長期化を予防する為にも、誰もが保険証を利用し病院で治療ができる状態にしておく事が国としての責任となります。その為の、国民皆保険制度です。

高齢化に伴い、今後は年齢的な理由で治療費の高騰は避けられません。実際、社会的問題としてニュースで取り上げられる事も多くなっています。このような状況の中、国民健康保険という国民の医療をカバーする構造を強化していかなくてはいけません。

しかし、国民健康保険を滞納したり加入を避ける事が、どれだけの全体のマイナスになるのか考えなくてはなりません。それは全て、自分に還ってくる訳です。「病院にあまりいかない」「使わない保険証の為にお金を払いたくない」と言う意見もあります。

ただ、国民健康保険の義務と言うものがどういった物なのか考えて頂き、払う事で自分にも全体にも良い影響が出ると言う事を理解して頂ければ自然と行動に移れると思います。

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