滞納・未払い・差し押さえ

給料未払いのまま会社倒産!知っておきたい給料の取り返し方

勤めていた会社が倒産してしまった場合、正当な手順を踏むことで給料を取り戻すことができます。

ですが、倒産した会社の資産の状況によって取り返せる金額や期間が変わってきます。

会社に資産が残っていた場合とそうでない場合です。

資産が残っていた場合はその資産の中から給料が支払われますが、残っていなかった場合は国が未払い分を立て替えて支払ってくれる「未払賃金立替制度」があります。

この2つのパターンと倒産手続きをせず、実質的な倒産をした場合の手続きの方法をまとめました。

残っていた会社の資産からの支払い

未払い給料は破産手続きを開始した日から3ヶ月以内かそれより前かで扱いがかわってきます。

3ヶ月以内に発生した未払い給料のことを「財団債権」、3ヶ月以上前に発生した未払い給料のことを「優先的破産債権」と呼びます。

「財団債権」について

「財団債権」は他の債権者よりも優先的にお金が支払われます。

破産手続きが始まってから3ヶ月以内に発生したものであれば基本給だけでなく、残業代や住宅手当などの固定手当、賞与なども支払いの対象です。

退職金については3ヶ月前までの未払い給料と同額が支払われます。

ですので、月20万円の給料をもらっていたとしたら3ヶ月分で60万円、3ヶ月分の未払い給料と同額の60万円が退職金となり合計で120万円が支払われます。

「財団債権」は会社が破産した場合、一番優先される支払いになりますので会社に資産がある場合には全額支払われることが多いです。

ですが、資産がなく倒産していることが多いと思いますので、全額が戻ってくると期待はしないでおきましょう。

支払いの時期は会社の状況によって大きく差があります。破産手続き中に支払われる場合もあります。

支払時期や支払われる金額を詳しく知りたい場合には、会社の破産手続きを行っている「破産管財人」に聞いてみましょう。

「優先的破産債権」について

3ヶ月以上前の未払い給料や、「財団債権」に該当しなかった退職金などは「優先的破産債権」になり「財団債権」の次に支払いの優先度が高く、他の債権者よりも優先してお金が支払われます。

ですが、配当手続きの中で優先的に支払われるお金なので支払いの時期は「財団債権」よりも遅れます。

また、従業員に支払う給料の他に税金なども「財団債権」です。

もし、「財団債権」を支払った結果会社の資産が残らなかった場合は「優先的破産債権」が全く支払われない場合もあります。

会社から未払い給料を取り戻す手続き

まず、会社が破産手続きを始めると「受任通知」が送られてきます。

受任通知は「破産手続きを破産管財人にお願いしたので、手続きは破産管財人に聞いてください」と言った内容が書かれています。

この受任通知には「債権届出書(債権調査票)」が添付されています。

債権届出書にあなたが未払いのまま受け取っていない給料や退職金の金額を記入します。

破産管財人に聞くといくらが未払いになっているのか教えてもらえるのでその額を書いて送付してください。

債権届出書を提出することで、会社に資産があれば未払い給料や退職金の一部を受け取ることができます。

国が支払ってくれる「未払い賃金立替制度」

会社に資産がなかった場合、「未払い賃金立替制度」を利用しましょう。

「会社に資産があり、未払いの給料や退職金を受け取ったけれど少額しかもらえなかった」といった場合も残りの未払い分を国に立て替えてもらうことができます。

未払い賃金立替制度を利用できる条件と支払い上限金額

未払い賃金立替制度には利用できる条件が決まっています。

  • 未払い賃金の合計金額が2万円以上であること
  • 会社が倒産してから2年以内の請求であること
  • 会社の倒産半年前から倒産後1年半の間に退職した人
  • 倒産した会社が1年以上事業活動を行っていたこと

また「財団債権」や「優先的破産債権」とは支払いの対象となる金額も変わってきます。

未払い賃金立替制度の対象となるのは基本給、残業代、退職金などです。

賞与や住宅手当、通勤手当などは対象とはなりません。

対象となる期間は退職日の6ヶ月前から、支払われる金額は原則として賃金の8割です。

「財団債権」や「優先的破産債権」とは違い全額が支払われるわけではないことに注意してください。

支払いの金額にも上限があり、年齢によって上限金額が変わってきます。

  • 30歳未満の場合・・・未払い賃金の上限:100万円 立て替え払いの上限:88万円
  • 30歳~44歳の場合・・・未払い賃金の上限:220万円 立て替え払いの上限:176万円
  • 45歳以上の場合・・・未払い賃金の上限:370万円 立て替え払いの上限:296万円

たくさんの給料を会社からもらっていたとしても、上限内の金額までしか立て替え払いはしてもらえませんので注意しておきましょう。

立替金が振り込まれる時期は「財団債権」などと同じく差があります。

詳しく知りたい場合には労働基準監督署の担当者などに聞いてみましょう。

未払い賃金立替制度の手続き

会社が破産手続きを行い法律上倒産した場合の「未払い賃金立替制度」の手続きの方法を解説します。

法律上倒産した場合には、破産管財人などに「証明書」を交付してもらいましょう。

証明書に必要事項を記入して「労働者健康福祉機構」に提出します。

記入しなければならない必要事項は名前や銀行口座番号などです。

もし、記入の仕方が分からなければ破産管財人に書き方を聞いてみてください。

立て替え払いの請求は会社が破産してから2年以内ですので忘れずに手続きをしましょう。

破産管財人などが証明書などをまとめて労働者健康福祉機構に送ってくれることもあります。

送付した証明書が法律上の要件を満たしていると認められれば証明書に書いた銀行口座に立替金が入金されます。

会社が倒産手続きをしていなかった場合

破産手続きにはお金がかかるため、小さい企業では法律上の倒産をしていない可能性があります。

そのような場合は「財団債権」などを受け取ることはできません。

未払い賃金立替制度を利用することになります。

まず、労働基準監督署で勤めていた会社が倒産したかを認定してもらう必要があります。

労働基準監督署に行き、「認定申請書」を交付してもらいましょう。

これに記入し提出することで、会社が倒産状態にあるかどうかを調査してもらえます。

倒産状態にあると認められたら次は未払いの給料があることを証明します。

労働基準監督署から「確認申請書」をもらい、認定の申請日、退職日、未払いの給料の金額などを記入します。

確認申請書を送ると、申請書を受け取った通知として「確認通知書」が送られてきます。

これにまた必要事項を記入し、「労働者健康福祉機構」に提出すると手続きは完了です。

ですが、未払いの給料があることを証明するための書類の提出を求められることがあります。

給与明細やタイムカード、労働契約書などをあらかじめ準備しておいてください。

どうすればいいかが分からない場合は労働基準監督署の窓口に相談にいくと書類の書き方や手続きの進め方を教えてもらえます。

提出した書類に不備がなく、法律上の要件を満たしていると認められると立替金が銀行口座に入金されます。

倒産が分かったら早めの対処で未払いの給料を取り戻そう!

会社に資産が残っている場合は「財団債権」や「優先的破産債権」として未払い給料を返してもらうことができます。

会社に資産が残っていなくても上限の金額までは未払い賃金立替制度を利用することで支払ってもらうことができます。

未払い賃金立替制度は会社が倒産してから2年以内と決まっていますので早めに対処してしまいたいですね。

また、倒産した会社が法律上の倒産を行っていなかったとしても手間はかかりますが、未払い賃金立替制度を利用することができます。

正しい手順で手続きを行うことで給料や退職金は戻ってきますので、「支払われなかった」と諦めずに対処していきましょう。

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