滞納・未払い・差し押さえ

財産の差し押さえは2パターンある!国と裁判所の強制執行を理解する

病気や災害、収入の減少や失業など、支払いをしたくても様々な理由から滞納してしまうケースがあります。滞納を放置すれば、差し押さえという最悪な結果に発展してしまう事もあります。

財産の差し押さえは、執行する側にとっては最終手段です。その為、財産の差し押さえには、条件やいくつかの手続きを踏まえなければ行えない縛りがあります。故に、強制執行が始まれば止める事が出来ません。

執行されれば手遅れな差し押さえは、一体どのように行われるのでしょうか?また差し押さえられる財産とはどんなものが有るのでしょうか?様々な視点から、差し押さえについてお話ししていきたいと思います。

絶大な力で財産は差し押さえられる!権力と対象を理解する

財産の差し押さえが行われる時は、強制執行のため抗う事は出来ません。給与や預金、家具や不動産など幅広い対象の財産がある日突然、強制的に差し押さえられてしまいます。

なぜこれほどの強制力が差し押さえにはあるのでしょうか?また、どういった物が財産として差し押さえられてしまうのでしょうか?強制力の理由と、差し押さえる事が可能な財産について確認していきましょう。

国か裁判所か?財産を差し押さえる事が可能な2つの権力

財産の差し押さえは、非常に強い強制力を持っています。では、なぜそのような事が可能なのでしょうか?それは命令を出している機関が、実は絶大な権力を誇っているからなのです。その機関は、2つあります。

財産の差し押さえは、この2つの機関のどちらかが関わっています。

1.国などの行政機関
2.裁判所

差し押さえは、基本的に滞納している金額を補填する為に行われます。ただどんな支払いの滞納をしているのかによって、差し押さえる機関が変わってきます。

例えば、税金など国に納めるものについては、国が差し押さえを行います。住民税や国民健康保険、国民年金などの滞納金を補てんする為に差し押さえが行われます。

クレジットカードや消費者金融などの滞納金は、裁判所を通じて差し押さえ命令が下されます。こちらは国ではなく、一般企業や個人が裁判所を通じて行います。

どんな物を滞納しているのかによって差し押さえる機関が変わりますが、執行しているのは国か裁判所なのです。

故に、圧倒的な強制力がある訳です。そして重要な点ですが、差し押さえを行うのが「国」か「裁判所」かで、通知の有無が変わってきます。

裁判所は差し押さえる際は差し押さえ予告書と言う通知を行いますが、国は国税徴収法及び地方税法の規定により通知なしでの差し押さえを行う事が可能です。

※国や行政機関は滞納時、督促状や催告など複数回通知を行いますが、実際の差し押さえの段階になると差し押さえ予告書が送られてくるケースと突然行われるケースがありますので注意が必要です。

大きく分ければ4つ!差し押さえられる財産を把握する

それでは、実際に差し押さえられる財産にはどういった物があるのかお話ししていきます。

  • 財産①:債権の差し押さえ(債権執行)

債権とは、勤務先からの給与や銀行に預けている預金などの事を指します。他にも、賃金、売掛金、生命保険の解約返戻金なども債権となります。

滞納している金額によって、差し押さえられる対象などは変わってきます。但し、年金や生活保護、児童手当などは差し押さえできない債権となります。また、給与も、4分の1までの差し押さえと制約があります。

基本的には、金銭もしくは金銭にスグに交換(換価に適した)できるものを債権と言います。特に、給与や預金などの債権は、生活に最も影響のある差し押さえ財産だと言えます。

  • 財産②:不動産の差し押さえ(不動産執行)

基本的には、土地と建物になります。他にも民法上は不動産ではないですが、民事執行上は不動産として扱われる、採石財団、漁業財団、鉱業権、地上権、永小作権などがあります。これらは農業や工業、鉱業などの事業をされている方には馴染みがある物となります。

住宅ローンの滞納で、自宅や分譲マンションを差し押さえられたなどは不動産執行にあたります。土地や建物の差し押さえは、住む場所を失うなど大変大きな影響が出ます。また、土地などは相続していたりすると親族などにも影響が出て大きなトラブルへと発展する可能性があるので注意が必要となります。

  • 財産③:動産の差し押さえ (動産執行)

不動産以外のモノは全て、動産となります。家の中にある、高級時計、絵画、ブランド品、宝石などが挙げられます。他にも、無記名の商品券や乗車券、映画等のチケットや有価証券(株券・手形・小切手)なども動産として挙げられます。

動産執行は、債権執行や不動産執行と異なっていて、差し押さえする対象を特定して申立てる必要がありません。

つまり執行場所を指定すれば、その範囲内にある換価(お金に換えられる)価値のあるものは全て差し押さえられてしまう可能性がある訳です。

その為、ドラマや映画のように家中をくまなく探す事が可能になる訳です。

※動産の差し押さえは、主に家主に立ち会いが求められます。ここで拒否などをすると、警察の立会いのもと動産の差し押さえが行われます。

  • 財産④:自動車と無体財産権の差し押さえ

自動車は、動産と分けて考えられています。通常、新車や新古車、高級車の場合は競売や公売に掛けてもある程度の金額が回収できるため問題ないとされますが、それ以外だと自動車の査定が低く見積もられるため思い通りの金額が換価できない可能性があります。

また、自動車の競売は予約金(10万程度)が必要となるので、古い車だと相対的に財産としての価値を認められない場合もあります。その場合は、差し押さえの対象とならない場合もあります。

無体財産権は、かなり特殊な財産となります。特許権、著作権、商標権、実用新案権、育成者権など聞きなれない物も含めあまり馴染みのない財産となります。持っている場合は、注意が必要な財産となります。

差し押さえにも制約はある!必要条件と差押禁止財産を知る

財産の差し押さえは国や裁判所が行う為、抗う事はほぼ不可能です。ただ、いくら権力があると言っても、それだけで強制執行できる訳ではありません。

財産の差し押さえは、しっかりした条件を踏まえ行われています。その条件をクリアする事で、はじめて差し押さえが行えるのです。

差し押さえを行う際、どのような手続きが行われているのか?また、差し押さえも全てを持っていける訳ではなく禁止対象がありますが、それは一体どういった物なのか?詳しく見ていく事で、どういった点に注意しなくてはいけないのかご理解頂けると思います。

国や裁判所もルールを守る!差し押さえに必要な条件を把握する

差し押さえには、いくつかの手順があります。それらをクリアする事で、差し押さえの正当性が成り立つ事になります。つまり逆に見れば、それらに注意する事こそ差し押さえをされない為の対処法となる訳です。

①事前の通達

支払日の翌日から、滞納が始まります。滞納については、様々な理由が各個人にあると思います。しかし、どのような理由があったとしても支払日を1日でも過ぎると、「支払いがされていませんよ」という督促状が郵送されてきます。

更に督促状が届いた後も、滞納が続くと催告の段階へと移ります。催告とは、電話・はがき・訪問などの手段によって支払いの催促を行う事を言います。これらは国税通則法(37条)、地方税法(329条)、民法(541条)によって、通達する日にちや期間が変わってきます。

財産の差し押さえの前には必ず、督促状の郵送と催告を複数回受けると言う一定の期間を経る事になります。

この段階で滞納額を完済したり、相談などを行って対処すれば財産の差し押さえと言う結果にはほぼなる事はありません。ただ、この段階で無視、放置などをすると悲惨な結果へと繋がってしまうので注意が必要となります。

②差し押さえ対象となる財産の調査

債権や不動産の差し押さえには、これを差し押さえしますと言う指定を行わなければなりません。その為、事前にどのような財産を持っているのか調査される事になります。

給与や家族構成、不動産や自動車の有無などを調査されますが、勤務先や取引先、金融機関などに連絡が入る可能性があります。また、住民税や国民年金、国民健康保険など徴収する行政機関は法律の規定に基づき滞納者への事前了解を得ずに調査を行う事が出来ます。

そのため、会社や親族・友人にバレる事でトラブルに発展する恐れがあるので注意が必要です。この財産調査については、長期滞納により差し押さえをしなくては回収できないと判断されてから行われます。つまり、滞納トラブルに早期対応していれば行われないという訳です。

③権利の証明ができる公的な文書

財産の差し押さえは、とても大きな強制力を持っています。その為、差し押さえる事を許可されている証明が必要になります。それが、債務名義という文書です。

<債務名義>
国家機関(裁判所や公証役場など)が作成した、請求権(滞納金を払え、建物を明け渡せなどの要求)、範囲、債権者、債務者を表示した公的な文書です。公正証書、和解調書、裁判の判決などが挙げられます。差し押さえなどの強制執行を行う場合、必要となります。

滞納が長期に渡ると訴訟を起こされる事がありますが、これらは全て「債務名義」を取得する為に行われています。裁判などをしなくても、公証役場などで作成された文書によって債務名義は証明できますので一概に裁判が行われ訳ではありません。

但し、公正証書や判決が下りたとしても、すぐに差し押さえられる訳ではありません。この段階で、滞納金の支払いを完了する事が出来れば、財産の差し押さえは回避する事が可能です。当然、この段階にいる方の懐状況を考慮すると難しいかもしれませんが、それでも解決策がある事を覚えておいて下さい。

④裁判所の許可

①②③を全て満たし、それでも滞納者が支払いをしてくれない場合は裁判所へ差し押さえの申請をする事になります。その際、「判決の通り、滞納額を給与から受けとりたいので差し押さえたい」「滞納者の財産を、このように差し押さえたい」など申立てる訳です。

これにより、裁判所の判断のもと、差し押さえをする事を許可する訳です。こうなると、あとは強制執行されるだけとなりますので、打つ手がなくなってしまいます。つまり、①②③のどこかで回避する事を念頭に置いておかなくてはいけない訳です。

財産の差し押さえは、国などの行政機関と裁判所の2つの機関から執行されます。注意点をまとめると下記のようになります。

◆国などの行政機関は①②を満たすだけで、差し押さえが可能となります
◆金融商品や家賃の滞納など民事の場合は、①~④を満たす事で差し押さえが可能です

最低限の生活は保障される!差し押さえできない財産もある

財産には差し押さえてはいけない、差押禁止財産があります。差押禁止財産には、差押禁止動産と差押禁止債権の2つがあります。

国税徴収法75条、民事執行法131条に禁止財産についての記載が細かく載っています。

まとめると基本的には、生活上欠かせない必需品や仕事上欠かせない必需品、そして生計を維持する為に受けている給付金(年金や生活保護、災害補償など)などは差し押さえが禁止となっています。

給与、賃金、退職金なども全額ではなく、4分の1程度の額のみ差し押さえが可能であり、それ以外の金額については禁止されています。

滞納から財産を差し押さえられるまでの流れを把握する

それでは、滞納から差し押さえまでの流れについてお話ししていきたいと思います。税金や金融商品など滞納する事で、様々な過程を経て最終的には財産の差し押さえとなる訳です。

一連の流れを理解する事で、いざという時、不安や心配の緩和に繋がると思います。

差し押さえには1年程掛かる!財産を差し押さえるまでの流れ

最初の流れは、基本的に同じになります。上記の条件①である、事前の連絡を満たすために督促や催告が行われます。

◆1.滞納(支払日の翌日から)

◆2.督促状

◆3.催告(電話・はがき・訪問などで催促をされる)

督促状と催告の違いは、お知らせか催促かの違いになります。通常、滞納から数日後に督促状が郵送されてきます。この段階では支払いが遅れている事と期日までにお支払下さいと言うお願いが書かれているだけです。

しかし、この段階で滞納が解消されないと、支払いを催促する連絡が行われるようになります。この段階で相談などして支払いの目途を立てる事が重要となってきます。もし、放置などするとズルズル悪い方向へと行ってしまうので注意が必要です。

一般的には3~4カ月程度、滞納が続くと催告から次の段階に進む傾向にあります。

<行政からの強制執行の場合(滞納処分)>
◆4.財産調査

◆5.差し押さえ

◆6.公売

一定期間の催告をしても滞納が続く場合は、財産の調査を行い差し押さえるべきものを何するのか滞納金額に応じて検討する事になります。その後、強制執行し差し押さえた物を公売に掛け、滞納金の補填にして完了となります。給与などの場合は、滞納金が完済できた時点で解除される事になります。

基本的には、国民年金、国民健康保険、住民税などの滞納をすると行政から財産の差し押さえが執行されます。他にも、事業などを行っている方は法人税、所得税などの税金の滞納で同じように差し押さえと発展する事になります。

中でも、国民健康保険は保険証の利用制限、利用停止などにも影響があり生活をかなり圧迫する事になります。税金は、滞納から差し押さえまでの期間にかなりのバラつきがあります。ある方は、滞納から4年後差し押さえを受けたり、ある方は滞納から2年後に差し押さえをされたりとかなりのバラつきがあります。

これは、地方自治体によって徴収の方針が若干違うために起こる現象です。基本的にですが、行政サービスの差し押さえまでの流れは法律によって決まっています。

滞納から、20日以内か50日以内に督促状の発送を行うように法律で決まっています。地方税と括られる税金の場合は、地方税法に従って20日以内に発送がされます。国税徴収法で括られる税金の場合は、50日以内で発送する事になっています。

さらに発送後は、10日以内に差し押さえを「しなければいけない」と決まっています。

つまり、滞納日から最短1~2カ月で差し押さえをする事が出来る状態だと言う事なのです。

但し、行政がそのような短期間で差し押さえをする事はありません。企業などが滞納すると額も大きく膨らむので半年~1年以内に動いたりしますが、個人ならば数年単位になる傾向が多いです。ただ、差押しようと思えばいつでもできる事を覚えておかなければいけません。

<裁判所からの強制執行の場合>
◆4.内容証明

◆5.支払督促、少額訴訟、訴訟

◆6.判決

◆7.差し押さえ申立て

◆8.強制執行予告書

◆9.強制執行(差し押さえ)

◆10.競売

クレジットカードや消費者金融、家賃の滞納などは民事として裁判所から差し押さえを執行されます。催告を放置して滞納を続けると、裁判所から内容証明が届きます。内容証明には、「滞納金を一括で指定の期日まで支払って頂けなければ法的手続きに移ります」と書かれています。

実際、期日までに支払いが無ければ訴訟→判決→申立て→差し押さえとい流れで、財産の差し押さえが強制執行されてしまいます。訴訟自体は、2~3カ月程で判決が出ます。

さらに差し押さえの申立てから強制執行まで2~3カ月程掛かるので、滞納から差し押さえまでは催告の3カ月を考慮すると、差し押さえまでには通常1年近くかかる事になります。

財産調査で多くの人にバレてしまう!

財産調査は、勤務先や取引先、金融機関などに対して行う事になります。その為、場合によっては自分の意図しない形で第3者に滞納している事がバレる事になります。

財産調査は身辺と財産の2つを調査します。

<身辺>
①勤務先や取引先の調査
②所得の調査
③家族構成
④戸籍の調査
<財産>
①給与
②不動産謄本の入手
③自動車の有無
④口座
⑤生命保険
⑥売掛債権(事業などをされている場合)

これらは、調べられる事は徹底的に調査されます。特に給与の調査、差し押さえなどは勤務先に迷惑が掛かり、後々日常業務に支障をきたす可能性もあるので注意が必要です。

財産の差し押さえを止める方法と事前の対策を把握する

差し押さえは非常に強力です。執行されてしまうと、抗う事が出来ず財産を持って行かれてしまいます。では、もし差し押さえられたらどうすれば良いのか?たった1つの解決策をお話ししていきます。

解決策は滞納金の解消!それ以外の方法は基本的にはない

「いきなり口座を差し押さえられて、生活ができない」「これからは、まじめに支払うので差し押さえを一旦解除して下さい」「差し押さえられると他の支払いができないので、取り敢えず返してほしい」など役所や裁判所などに訴えたとしても、かなり厳しい返答が帰って来ると思います。

財産を差し押さえられたら、滞納している金額を完済するしか差し押さえの解除方法はないと思った方が良いでしょう。基本的に、上記の流れを見て頂ければ分かるように、多くの段階を踏まえ最終手段として財産の差し押さえに踏み切っています。

故に厳しい言い方になりますが、差し押さえの前の段階でどうにかできた筈だと、執行する側は考えてしまいます。行政の差し押さえは予測がしにくいですが、裁判所からの差し押さえは期日ある程度予測できるので、もしどうしても滞納金が支払えない場合は、換価の猶予を申請する事も1つの手段です。

<換価の猶予>
申請が通れば、1年を限度として、滞納者の財産を公売や競売に掛けないようにする処置です。但し、必ず認められる訳ではないので、申請する場合は専門家に相談する必要があります。

基本的な解決は滞納金の完済なので、お金を集める(親や業者から)手段も考慮してみると良いかもしれません。但し、慎重に行動しなければより大きな金銭トラブルになるので注意が必要です。

事前の相談!早急な相談!苦しい時こそ真摯な態度が必要です

滞納後、財産の差し押さえにまで行く方に多いのが、督促状や催告を放置する事です。差し押さえをされない為には、当然滞納額の支払いを上記で示した流れのどこかの段階で行わなければいけません。

ただ、多くの滞納者の方は、それが困難です。ですから、別の手段を取らなくてはなりません。それが、事前に相談、もしくは早急な相談です。督促状や催告の段階で、とにかく支払いについて相談し分割や支払期日の延期などを提案する必要があります。

さらに言えば、「支払う意志」と言うものを見せなくてはいけません。結局のところ、話す事が一番の対処法であり、まずはそこから始めなくては先に進みません。

滞納する事は罪ではありません。それは仕方がない事です。ただ、相談や連絡が無ければ事態は悪い方へと流れて行ってしまいます。財産の差し押さえの対処法は、相談と言う最も簡単な事なので絶対に相手からの連絡は放置しないようにしましょう。

閉じる
閉じる