滞納・未払い・差し押さえ

銀行口座が凍結される!?年金滞納による差し押さえの詳細と回避方

みなさん、国民年金保険料は忘れずに納めていますか?

もし、忘れていた、まだ収めていないという方は気をつけてください。

実は、国民年金保険料を未納のまま放置し続けると、最終的に銀行口座や車、家財等の財産を差し押さえられる可能性があるんです。

特に、最近は強制徴収の対象者となる方が増えており、未納のまま催告状等も放置した結果、気づけば差し押さえのため銀行口座が凍結されるなんてことも…。

では、財産を差し押さえられないためにはどうすれば良いのか?

ここでは、そんな国民年金滞納時の差し押さえまでの流れや、差し押さえの避け方等をご紹介します!

最終催告状が届いたら危険!年金滞納から差し押さえまでの流れ

国民年金保険料の加入・納付は、20歳以上60歳未満の国民の義務です。

会社勤めの方は給料から自動的に保険料が引かれますが、自営業やフリーランスの方等は国から発行される納付書で、納付期限内までに自分で保険料を納める必要があります。

もし納付を忘れ、納付期限がすぎてしまったら取立てを受けることにもなり、最悪の場合、給与・預貯金、家財や車等の財産を差し押さえられてしまう可能性があります。

では、国民年金を滞納してしまった場合、どのように督促が行なわれるのでしょうか?

年金を滞納してから差し押さえまでの過程は、以下のようになります。

  • 「特別催告状」の送付と、電話等での納付督励
  • 所得調査が行なわれる
  • 「最終催告状」の送付
  • 「督促状」の送付
  • 「差押予告通知書」の送付と、財産調査が行なわれる
  • 「滞納処分(財産差押)」

このように差し押さえに至るまでに、それぞれ納付期限が決められた書面が何度か送付され、各書面の納付期限を過ぎるごとに次の段階へと進んで行きます。

では、各段階についてもう少し詳しく見ていきたいと思います。

「特別催告状」の送付と、電話等での納付督励

国民年金保険料の納付期限を過ぎ、滞納をしてしまうと「特別催告状」が送付されます。

特別催告状は複数回届く場合があり、控除後所得や滞納してしまった期間に応じて優先的に届けられます。

また、書面での督促の他にも年金事務所からの電話や訪問、年金事務所から委託された民間業者からの電話・手紙・訪問によって催促されることもあります。

このように書面の他にも電話等で複数回の納付督励があるのですが、これらに応じず未納が続くと、通知後に所得調査等が進められる可能性が高まります。

所得調査が行なわれる

納付督励を行なっても納付の意思が見られなければ、保険料を支払える能力があるか所得の調査が行なわれます。

これは滞納者本人の所得はもちろん、連帯納付義務のある配偶者、またご両親と一緒に暮らしている方は世帯主の所得も調査されます。

そのため、万が一財産差し押さえになってしまった場合、滞納者の他に、配偶者や世帯主の財産も差し押さえ対象になってしまうので注意してください。

「最終催告状」の送付

特別催告状や電話・訪問での督促を無視し続けると、強制徴収の開始通知とも言える「最終催告状」が送付されます。

この時点で所得調査は終わっていることから、差し押さえ対象者として確定されています。

この時点でも戸別訪問や電話等で納付の督励が行なわれますので、支払いの意志を示したり納付について相談をしたりと丁寧に対応すれば問題ありません。

ですが、この時点に至ってもなお納付期限までに適切な対応がされなければ、さらに「督促状」が送付されることになります。

「督促状」の送付

最終催告状の次に送付される「督促状」は、滞納者本人の他にも連帯納付義務のある配偶者、世帯主にも通知が届けられます。

国民年金保険料は本来の支払期限から2年で時効になるのですが、「督促状」が発行された時点で時効は中断されるので、支払わないままでいることも非常に難しくなります。

また、この督促状には納付期限となる納付指定日が記載されており、納付指定日を過ぎた分の保険料より延滞金が発生するようになります。

延滞金の割合については、日本年金機構の公式ホームページに掲載してあり、各年毎に割合が異なります。

各年毎の他に納付期限の翌日から3ヶ月、納付期限の翌日から3ヶ月を経過してからで延滞金の割合は変わり、延滞金は以下の式で求められます。

「延滞金=納付すべき保険料(1,000円未満切捨て)×延滞金の割合×滞納日数÷365日」

延滞金は、滞納分全額が期限内に一括で払えなくても、一部納付が認められればいくらか減らすことも出来ます。

それでも、保険料に加えて延滞金を納めるのは大分苦しくなるので、ここまで滞納してしまう前に納付をするなり、窓口に相談に行くなりしておくことをオススメします。

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「差押予告通知書」の送付と、財産調査が行なわれる

督促状も無視してしまうと「差押予告通知書」が届き、強制徴収までいよいよ猶予がありません。

また、このタイミングで差し押さえ可能な財産調査も行なわれます。

調査対象は滞納者、配偶者、世帯主であり、金融機関の預金残高や生命保険等の確認を行なうほか、事業者の場合は売掛金等の債権の有無も調査されます。

また、金銭以外にも所有する車や不動産等、換価可能な財産全般についても調査されます。

差押予告通知書は、書かれている期限までに年金事務所の窓口に申し出ればギリギリ強制徴収は免れますので、届いてしまった人は急いで年金事務所へ相談に行きましょう。

「滞納処分(財産差押)」

そして差押予告通知書も無視してしまえば、とうとう滞納処分として財産を差し押さえられます。

預金や債権等は速やかに取り立てられ、不動産等の現金化する必要があるものに関しては公売にかけられ、金銭化した後に保険料+延滞金分として収納されます。

この段階までいってしまうと、差し押さえの対象となった物を取り戻すのはほぼ不可能になります。

このように滞納したら書面、電話等で納付督励が行なわれ、それでも納付や年金事務所への相談もないといったように納付意志が見られない場合のみ、財産の差し押さえが行なわれるのです。

いざというときお金がもらえない!国民年金保険料未納のデメリット

国民年金保険料を未納のままにしておくデメリットは、差し押さえだけではありません。

老後受け取ることができる老齢年金は受給資格期間というものがあり、10年以上、公的年金制度へ加入していた方しか受け取れません。

もちろん一部払っていなくとも、10年以上の納付期間があれば老齢年金は受け取れますが、未納の期間に応じて受給額は減ってしまいます。

これだけですと、「年金をもらうなんて先の話」や「老後の資金は自分で溜めるから必要ない」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、年金には老齢年金の他、万が一のときに受け取れる障害年金や遺族年金もあるんです。

障害年金は、不慮の事故や病気等で身体又は精神に障害を負い、生活や仕事等に支障が出る場合に受け取れる公的年金のことです。

遺族年金は、家族を養っていた被保険者が死亡した際、遺された家族が生活に困ることがないように支給される公的年金です。

いずれも、突然の出来事によって生活が困窮しないように受け取れる援助になりますが、初診日または死亡した月の前々月までの1年間に保険料の未納が合った場合、障害年金と遺族年金は受け取れなくなってしまいます。

万が一の自体が起こった際、通常であれば受け取れたはずの年金が受け取れない、なんてことになってしまったら困りますよね?

差し押さえを受けないためにというのもありますが、万が一の備えとして保険料は滞納せず、支払っていた方が良いでしょう。

強制徴収強化で対象者が拡大!対象となる滞納期間や所得は?

近年、国民年金保険料の納付率が60%程に低迷していることもあり、国民年金制度への信頼を確保するためにも納付率の向上が課題となっています。

そのため日本年金機構では、平成26年度から特に年金滞納者に対する強制徴収を強化しており、強制徴収の対象となる方は年々、拡大傾向にあります。

以下の表に厚生労働省が発表している強制徴収の実施状況、過去5年分をまとめてみました。

実施年度 最終催告状 督促状 財産差押
平成25年 78,030件 46,274件 10,476件
平成26年 65,654件 46,586件 14,999件
平成27年 84,801件 43,757件 7,310件
平成28年 85,342件 50,423件 13,962件
平成29年 103,614件 66,270件 14,344件

このように年々最終催告状を送付される件数は増えており、それに伴って財産差し押さえの件数も増えているのがわかります。

差し押さえ件数の増加は強制徴収を強化しているからというのもありますが、加えて強制徴収の対象者となる滞納期間や控除後所得が、年々引き下げられていることも理由の一端としてあげられます。

日本年金機構は平成30年度より、「控除後所得額300万円以上かつ未納月数7ヶ月以上」の滞納者を対象に強制徴収を行なうことを明言しています。

平成26年度は強制徴収対象者の範囲が「控除後所得額400万円以上かつ未納月数13ヶ月以上」だったことを考えると、明らかに基準が厳格化されているのがわかりますね。

このように強制徴収の基準は年々厳しくなっているので、年収が少ない方も未納の保険料を放置せず、どうしても払えない場合は早いうちに年金事務所などに相談に行きましょう。

保険料の免除・猶予も可能!差し押さえを避けるための方法・制度

滞納に気づき、差し押さえを避けたい方は早めに年金事務所や、役所の国民年金窓口へ相談に行きましょう。

例え、今は滞納分を支払うことが難しい状況にあっても、相談に行き納付意志があることを示せば強制徴収は止まりますし、保険料の免除や滞納分の分割払いなど職員の方もいろいろと代替案を説明してくれます。

その際、滞納時に取れる支払い方法、また経済的に困窮している方が利用できる保険料の免除・猶予制度もいろいろありますので詳しく見てみましょう。

滞納分の分割払いと、猶予制度

もし滞納分を一括で納付するのが難しい場合は、滞納分を分割払いにしましょう。

分割の金額については、事業の経営状況等を踏まえつつ、未納分が溜まり続けないように窓口の職員の方と相談しながら適切な金額を設定することが出来ます。

分割も厳しく、保険料等を一時納付することで事業や生活の維持が困難になる恐れがあるあると認められた場合は、保険料の納付期限から6ヶ月以内に申請することで、1年以内の期間に限り「換価の猶予」が受けられる場合があります。

換価の猶予が認められると、差し押さえが猶予されるのはもちろん、猶予期間中の延滞金が一部免除されます。

ただし、猶予を受けるには猶予金額に相当する担保の提供を求められたり、猶予許可通知書に記載される事前に決めた分割納付計画通りに納付をしないといけなかったりと、いろいろと制約もあります。

滞納分の保険料をどのように払うかは、ご自身の納付が困難な理由を相談した上で、受けられる手続きや必要な書類等も含めて窓口に確認をしましょう。

また、収入の減少や失業等でそもそも保険料の支払いが困難な方は、「保険料免除・納付猶予制度」、「学生納付特例制度」を受けることが出来る可能性があります。

「保険料免除制度」

保険料免除制度は申請者本人、世帯主、配偶者の中で最も所得が高い人の所得に応じて、保険料の納付が全額~4分の1免除される制度です。

免除される金額の割合は、全額、4分の3、半額、4分の1の4つに分かれており、それぞれの所得条件は以下の通りになります。

全額免除 申請期間の前年度所得が、以下の金額の範囲内である
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
4分の3免除 申請期間の前年度所得が、以下の金額の範囲内である
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除 申請期間の前年度所得が、以下の金額の範囲内である
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除 申請期間の前年度所得が、以下の金額の範囲内である
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

保険料が免除されればその分は支払わなくて良くなりますし、免除分、受給額は多少減りますが保険料を払っていなくても年金がもらえるというメリットがあります。

支払いが苦しい方はとりあえず申請しておいても、損はないでしょう。

「納付猶予制度」

世帯主の所得が高く、免除制度が受けられなかったという方は「納付猶予制度」を受けられる可能性があります。

納付猶予制度は審査対象となる所得は本人と配偶者のどちらかになり、所得が「(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円」の範囲内であれば猶予を受けることが出来ます。

猶予制度は免除とは違うので後で保険料を納める必要はありますが、猶予期間中は年金の受給資格期間に換算されますので未納とは違い、猶予中も障害年金や遺族年金を受け取れるのが特徴です。

納付猶予制度は以前まで「若年者納付猶予制度」と呼ばれ、20~30歳未満しか利用できない制度でしたが、平成28年7月以降からは20~50歳未満の方と制度を利用できる年齢の幅が広がりました。

これにより、より幅広い年代の方に利用しやすい制度となっています。

学生限定、「学生納付特例制度」

「学生納付特例制度」はその名の通り、高校・大学・専門学校等の各種学校に在籍している学生の方が利用できる制度です。

学生納付特例も納付猶予と同じく保険料の納付が猶予される制度であり、所得は本人の所得のみが審査対象となります。

申請者本人の所得が「118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」の範囲内であれば申請可能ですので、アルバイト等で相当稼いでいない限り申請できるでしょう。

また対象となる学校も夜間・定時制課程、通信教育課程と幅広いので、自分の通う学校が対象校か気になる方は、日本年金機構の公式ホームページの「学生納付特例対象校一覧」より確認してみてください。

ただし、学生納付特例制度が利用できる方は学生納付特例の申請が優先され、通常の保険料免除や納付猶予の申請はできませんので注意をしてください。

これらの「保険料免除・納付猶予制度」、「学生納付特例制度」は過去2年1ヶ月分までであれば、遡って申請をすることも可能です。

そのため、「保険料が高くて払えない!」と思ったら未納のまま放置せず、年金事務所等に相談をしましょう。

平日、お仕事等で時間が取れないかたは電話での相談も可能ですし、また保険料の免除・猶予制度は必要書類を郵送して申請することもできます。

まずは、電話で申請可能な制度や必要な手続き、書類などを聞いてみてください。

差し押さえを避けるためには、早めに窓口に相談を!

差し押さえによる強制徴収のポイントまとめです!

  • 「財産差押」実行までに「特別催促状」、「最終催告状」、「督促状」、「差押予告通知書」 などの書面や電話、訪問での納付督励があるので、早めに対処をしましょう
  • 「財産差押」は、本人のみならず連帯納付義務のある配偶者、世帯主も対象
  • 「督促状」の指定納付日までに未納分を納付しないと、「延滞金」が発生してしまう
  • 滞納しても窓口に相談に行けば、「分割納付」、「換価の猶予」を受けることが出来る
  • 保険料の納付が経済的に困難な人は、早めに、「保険料免除・納付猶予制度」、「学生納付特例制度」の申請をしましょう!

近年は、強制徴収の対象者が年々拡大されていることもあり、年金滞納による差し押さえは他人事ではなくなってきました。

もちろん早い段階で適切に対処すれば差し押さえは免れますが、強制徴収の段階が進むごとに、どんどん対処が厳しくなっていきます。

現在保険料を滞納してしまっている方、特に経済的に支払いが困難な方は、早めに年金事務所や、役所の国民年金窓口へ相談しておきましょう。

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