奨学金を滞納するとどうなるの?時系列で確認してみよう
奨学金を利用して進学をした…という方も多いのではないでしょうか?今や約3人に1人は奨学金を利用しているとも言われています。
そんな奨学金は、在学中には大変ありがたいものですが、その多くが卒業後返還をしなくてはいけません。
しかし、諸事情により返還が思う通りいかない…、滞納してしまった…というケースも少なからずあります。
奨学金を滞納してしまった場合、いったいどうなるのでしょうか?
今回は、最も多くの方が利用している独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の奨学金において、滞納したらどうなるか、時系列でまとめてみました。返還に困っている方、すでに滞納して不安な方などの参考になれば幸いです。
奨学金を滞納…甘く考えていると痛い目を見るかもしれません!
住宅ローン、消費者金融からの借り入れ、高額商品の分割払い…など世の中にはローン商品があふれかえっていますよね。ローンは借金と同じですから、きちんと返済しなくてはいけない…と思っている方がほとんどでしょう。
絶対に遅れないように返済しよう…と、日々の生活費を削っても返済をするという方も多いものです。
しかし、これが奨学金の返還となると、「少しくらい返せなくても大丈夫かな?」と考えてしまう方がいるようです。
本当に奨学金の返還は少しくらい返せなくても大丈夫なのでしょうか?
そもそも奨学金とは一体どんな制度なの?
まず、奨学金とはどのような制度なのかを振り返ってみましょう。
JASSOの奨学金は、本来は進学をしたいと考えている学生が、経済的な理由で進学を断念しなくても良いように、また、金銭の心配なく安心して学生生活が送れるようにするために学生本人に学資の「貸与」、「給付」を行っているのです。
奨学金は「給付型」と「貸与型」の2種類があります。
「貸与型」は、国内で学ぶ人向けの奨学金と海外留学向けの奨学金に分かれ、更に国内で学ぶ人向けの奨学金は、大きく第一種(無利息)・第二種(利息がつく)に分かれています。
第一種・第二種ともに、基本的に在学中は返還の義務はありません。卒業後から返還がスタートします。
JASSOの奨学金の場合、利用するのは進学する本人です。そのため、返還の義務も利用した学生本人が負う事となります。
今回ご紹介するのはこの「貸与型」奨学金の返還における滞納についてです。
奨学金も他のローン同様信用情報が登録されるケースもあります!
奨学金は、学生の時は貸与されるだけです。返還が基本的に卒業後から始まる為、中には、「返還しなくてはいけないもの」という認識がだんだんと薄くなってしまっている方がいらっしゃるのも事実です。
しかし、当然のことながら「貸与型」の奨学金を利用した方は返還をしなくてはいけない義務があります。これは、卒業後就職できようが出来なかろうが関係ありません。
「奨学金」というと、なんだか他のローンとは異なる感覚になるかもしれませんが、有体に言うと「借金」に変わりないのです。
そのため、滞納を続けるとまず「個人信用情報機関」にその情報が登録されてしまいます。
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- 個人信用情報機関とは…
クレジット・ローンを利用した時に、加盟企業により登録される信用情報を登録・管理・保管する機関の事です。信用情報は、氏名・住所・勤務先などの客観的な個人情報に加え、クレジット・ローンなどの利用状況なども登録されます。
個人信用情報機関に登録された情報は加盟会社であれば照会することができ、新たにクレジット等の申し込みがあった場合の審査の材料ともなります。
きちんと返済している場合は実績として評価されますが、延滞・事故情報も記載されますので、金融問題を起こした場合は、大きなマイナスとなってしまうのです。
個人信用情報機関は日本では以下の3社あります。
- 株式会社日本信用情報機構
- 株式会社シー・アイ・シー
- 全国銀行個人信用情報センター(一般社団法人全国銀行協会)
JASSOの奨学金は「全国銀行個人信用情報センター」に加盟しています。
ただし、他のローンとは違い、奨学金を申し込みしたり、貸与されたらすぐ信用情報が登録されるというわけではありません。
JASSOが信用情報を登録するのは、延滞が3か月以上続いた場合(返還開始後6ヶ月が経ってから)です。
つまり、通常通り返還している場合は、信用情報は登録されません。
最悪の場合差し押さえなどの可能性もあります!
通常のローンを長期間滞納してしまうと、最終的には給与等財産の差し押さえに発展してしまうことがありますよね。
実は奨学金の滞納もその末路は同じです。
通常のローンと同じく、返還が行われないと、督促がきます。返還がきても督促が行われず、3か月以上滞納した場合は個人信用情報機関に情報が登録されます。それから更に長期間返還が行われない場合は、「期限の利益の喪失」となり一括返済が求められることなるのです。
「期限の利益の喪失」とは、簡単に言うと長期間にわたっての分割返還が認められているその権利を失うということです。これにより、毎月の分割返還ではなく、一括での返還をJASSOから求められることになります。
そしてその後さらに返還が出来ない状態が続くと、最終的に給与や財産などの差し押さえ手続きを取られてしまうのです。
個人信用情報機関に滞納などの情報が登録されると住宅ローンやカーローンなどの新たなローン審査に大きな悪影響を与えますし、差し押さえという事態になってしまうと、日常生活にも大きな支障を与えてしまいます。
「奨学金なら返還しなくても大丈夫だろう」と甘く考えている方がいらっしゃるなら今すぐその考えを改めましょう。
では、実際に滞納してしまった場合、具体的にはどのような流れになるのでしょうか?
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教えて…滞納した時にまずはどんな流れになるのか知りたい!
奨学金もきちんと返還しないと、他のローンと同じように信用情報機関に登録されたり、差し押さえの危険がある…となると実際にどのような流れになるのか気になりますよね。
ここからは実際に時系列に沿って滞納した時の流れをみていきましょう。
まずは滞納回数別に、JASSOが提示している督促方法や目安についてご紹介します。
ご注意を…奨学金を滞納すると延滞金が発生します!
具体的な流れの前に、まずは延滞金についてきちんと把握しておきましょう。
奨学金も返還が遅れてしまうとそれに応じて延滞金が発生します。
延滞金の金額については、奨学金の種類、採用された年度、返還方法などにより計算方法が異なりますので、注意しましょう。
延滞金の計算方法はJASSOのホームページに記載されています。
初めての滞納…遅れが1回だけの場合、延滞金はかかりません!
では、まず、初めて滞納してしまった場合についてです。
滞納が1回目となる場合は、延滞金はかからず、翌月に2か月分まとめて口座振替が行われることになります。
奨学金の返済は毎月27日(金融機関が休みの時は翌営業日)となりますので、大まかな流れの目安は以下のとおりです。
(例)6月27日振替分を返済できず1回分振替不能となった場合
- 7月7日以降 督促(電話)
- 7月10日以降 「奨学金返還の振替不能通知」(本人宛)が送付される
- 7月17日以降 「個人信用情報機関への登録について(通知)」(本人宛)が送付される
- 7月27日 6月分・7月分の2か月分の合計額を振替え
この時点では延滞金がかかりませんので、出来るだけ早いうちに手を打つようにしましょう。
2回目の滞納…延滞金もかかってくるので要注意!
2か月連続で振替不能となり滞納すると、今回からは延滞金もかかってくるようになります。翌月に3か月分+延滞金を振替えることになるのです。
また、連帯保証人・保証人がいる場合、連帯保証人にも通知が行ってしまいます。
場合によっては連帯保証人に電話が来るケースもあるようですので、連帯保証人がいる場合はあらかじめ相談をしておくなどした方が良いでしょう。
(例)6月27日・7月27日振替分を返済できず2回分振替不能となった場合
- 8月7日以降 督促(電話)
- 8月10日以降 「奨学金返還の振替不能通知」(本人宛)が送付される
- 8月11日以降 「奨学金の返還について」(連帯保証人宛)が送付される
- 8月17日以降 「個人信用情報機関への登録について(通知)」(本人宛)が送付される
- 8月27日 6月分・7月分・8月分の3か月分+延滞金の合計額を振替え
一気に3か月分の返還と延滞金の合計額が振替えられることになるのです。大きな金額となってしまう場合もあります。
振替額が大きくなってしまい3回目の滞納…一体どうなるの?
3か月連続で振替不能となり、3か月以上の滞納となってくると、JASSOの対応も少し変わってきます。
そして翌月に4か月分+延滞金を振替えることになります。
また、連帯保証人・保証人がいる場合、連帯保証人・保証人の双方にも通知が行ってしまいます。
(例)6月27日・7月27日・8月27日振替分を返済できず3回分振替不能となった場合
- 9月7日以降 督促(電話)
- 9月10日以降 「奨学金返還の振替不能通知」(本人宛)が送付される
- 9月11日以降 「奨学金の返還について」(連帯保証人・保証人宛)が送付される
- 9月17日以降 「個人信用情報機関への登録について(通知)」(本人宛)が送付される
- 9月27日 6月分・7月分・8月分・9月分の4か月分+延滞金の合計額を振替え
このころになってくると、返還額・延滞金ともに大きなものとなってくるため、返還事態が難しい…という状況かもしれません。
4か月連続で振替不能となり、それ以降もそのまま返還しないでいるといったいどうなってしまうのでしょうか?
奨学金の返還滞納が長期間になってしまった!いったいどうなるの?
一度返還が滞ってしまい、そこからずるずると返還できず、いつの間にか長期間にわたってしまった!という場合はいったいどうなるのでしょうか。ここからの流れは、大きく2つに分かれていきます。
貸与型の奨学金の場合、申し込み時に連帯保証人・保証人を設定している場合と、保証機関を利用している場合があり、この保証の違いで流れが変わってくるのです。
人的保証の場合民事訴訟法に則った法的措置が行われます
4か月以上滞納をしている時点で、連帯保証人・保証人の方に連絡などが入ることになり、大きな迷惑、心配をかける事となります。
もしこのままの状態で長期間滞納をしてしまうと、JASSOは次段階として、民事訴訟法に基づいて法的措置を行うこととなるのです。
まず、返還されていない金額(現在滞納している金額とこれから返すべき金額の合計)、利息、延滞金の一括返還を請求するのとあわせて支払督促の予告が行われます。
支払督促の予告に記された期限を過ぎても返還をしないと、裁判所に支払督促の申立を行われる流れとなります。
この時点でも返還をせず滞納を続けると、裁判所に仮執行宣言付支払督促の申立が行われ、
支払督促に仮執行宣言が加わると、いつ強制執行を行われてもおかしくない状態となるのです。
仮執行宣言付支払督促の申立をされてもなお返還をせず滞納を続けた場合、強制執行の手続きを取られてしまいます。
強制執行の手続きが取られると、給与や財産などを差し押さえられ、そこから奨学金の返還分を取り立てられることとなります。
機関保証を利用した場合も最悪の場合は強制執行されます!
では、次に機関保証を利用した場合をご紹介しましょう。
JASSOでは、奨学金を契約するときに、機関保証を利用することができるのです。JASSOの場合、公益財団法人 日本国際教育支援協会(JEES)がその保証を担っています。
3ヶ月を過ぎてもなお滞納を続けると、期限の利益の喪失となり、今までの滞納分、延滞金等もあわせて一括返還を請求されます。
それでもなお、返還されない場合、JASSOはJEESに対して、滞納者に代わって返還金を一括で支払うよう、代位弁済請求を行います。
請求がJEESに行われると、JEESはJASSOに滞納者に代わって一括返還をする代位弁済を行うのです。この時、債権がJASSOからJEESに移行されます。
また、代位弁済の情報は個人信用情報機関に登録されます。代位弁済の情報は、これまでの延滞情報よりもかなりネガティブな情報となり、今後のクレジット人生を左右してしまうかもしれません。
代位弁済が実行されるとJEESより、滞納している人に対して、代位弁済分の一括請求が行われます。この時、きちんとJEESに相談し、認められれば、一括支払いではなく、分割での支払いにも応じてくれます。
しかし、もし支配の意志もみせず、そのままJEESの請求や督促を実行しないでいると、最終的には、強制執行の手続きが取られることとなります。
奨学金を滞納しそう…そんな時に助けになる制度もあります!
いかがでしたでしょうか?実際に奨学金の返還を滞納したときの流れをみていきました。
人的保証の場合も、機関保証の場合も、ずっと返還を続けず不当な態度を取り続けると最終的には強制執行の手続きを取られてしまうかもしれません。
強制執行は嫌だけど、返還するためのお金がない!という場合は、いったいどのようにしたら良いのでしょうか?
返還できない…と分かったら早めに手を打つのが一番!
返還したいけどお金がないんだからしょうがないじゃないか!学校を卒業したら就職して返還…というつもりだったけど就職できなかった!きちんと返還していたけど病気になってしまい治療の間は返還が難しい…なんて様々な事情があるかもしれません。
返還できないことを「仕方がないから」とそのままにしておきたくなるかもしれませんが、放置は一番してはいけないことです!
放置することにより、個人信用情報機関に登録されたとしましょう。
実は、一度個人信用情報機関に奨学金の情報が登録されてしまうと、その情報は全額を返還しきってかつ5年間保管されることになるのです。
奨学金の返還は10年を超える長期間にわたる場合が多いので、その期間ずっとネガティブな情報が登録され続ける事となります。
住宅ローンやカーローンなど大きなライフイベントに悪影響を与えてしまいかねませんのでこのような状況となる前に、きちんと手段を考えましょう。
返還が難しくなった方向けに、様々な制度が設けられています
失業、災害、傷病等により経済的に奨学金の返還が難しい…という方に向けて、JASSOでは、いくつかの制度が儲けられています。
- 返還免除
- 返還期限猶予
- 減額返還
返還免除については、以下の方に限られています。
- 本人が死亡した場合
- 身体または精神の障がいにより働くことが出来なくなったり、労働能力に著しい問題が出た場合
これらの状態になった場合は、まずJASSOに相談をしてみましょう。対象となるかどうかをはじめ、返還免除の為の方法などを教えて貰う事が出来ます。
返還期限猶予・減額返還に関しても一定の条件などがあります。
返還期限猶予 | 減額返還 | |
---|---|---|
所得制限 ※被扶養者がいる場合などは一定額を控除する |
あり (給与所得の場合目安として年間収入額300万円以下) |
あり (給与所得の場合目安として年間収入額325万円以下) |
総返済額 | 変更なし | 変更なし |
期限 | 最長10年 | 最長15年 |
災害もないし、傷病もないけど、経済的に返還が厳しい…という場合は、年収325万円を超えると利用は難しいと思っておきましょう。
これらの制度は、申請したら誰もが受けられるというわけではなく、JASSOの審査があります。
そのため、年収400万円の方が、カードローンの返済もあるし、趣味を謳歌したいし、旅行にも行きたいし…なんて理由では許可は下りません。
また、返還期限猶予・減額返還はあくまでも現時点で返還が難しい方に向けた救済措置ですから、総返済額が減額されたりするわけではありません。
しかし、急に失業してしまった、病気になってしまった…なんていう時には大変ありがたい制度ですから、「返還できない!」となった時に、まずご自分がこの制度を利用できないかどうかチェックしてみましょう。
制度の詳しい条件、利用方法などはJASSOのホームページに記載されています。
借りたらきちんと返すこと…奨学金もローンと同じです!
奨学金だから少々返還できなくても平気でしょ…という考えは大変危険ということがお分かりいただけたのではないでしょうか?
奨学金も他のローンと同じで、借りているのだからきちんと返す必要があるのは当たり前の事なのです。
また奨学金の場合、返還されたお金が今の奨学生たちに利用されています。そのため、返還を滞納する人が増えれば増えるほど、奨学金というシステム自体に綻びが生じてしまうことになるのです。
奨学金を申し込む学生のときは、「将来働いて返せるから大丈夫だよ」と考えますよね。しかし、実際の人生ではそう上手くいかないかもしれません。
返還が出来ないとなった時点で、早めにJASSOに相談するなど手段を取るようにしましょう。
返還できず滞納となりそのままズルズルしてしまうと、のちの人生に大きな影を落とすこととなります。
奨学金の返済は10年を超える長い付き合いとなる場合が多いので、社会人となった時点できちんと返還計画を立て、毎月着実に返還していくことが何よりも大切です。