滞納・未払い・差し押さえ

家賃を滞納してしまったら?強制退去までの流れと期間を知っておこう

家賃は収入の3分の1までが適正水準を言われています。手取りでボーナスを含めない金額の3分の1が安全ラインと言われていますが、それでも支出の中では大きなウェイトを占めていますよね?

毎月の支出が一定でしたら払える家賃も、突発的な支出が重なれば払えなくなることも・・・。

家賃を滞納し続けてしまうと強制退去となりますが、一体どのような流れで退去となるのでしょうか?また、どれくらいの期間で強制退去となってしまうのでしょうか?

家賃滞納時の退去に関して知っておくべきこと

1ヶ月の家賃滞納で強制退去や契約解除になるかというと、基本的にそのようなことはありません。

アパートやマンションなどの賃貸物件を借りるための契約は「賃貸借契約」と呼ばれますが、滞納している家賃を督促することなく貸し手から強制退去を求めたり契約解除をすることは、民法で認められていないためです。

賃貸借契約書によっては「1ヶ月でも滞納したら退去させることができる」ということが書かれているものもあります。「無催告解除」というこの条項は、貸し手と借り手の信頼関係が崩壊していると見られる場合(例えば借り手が過去に何度も滞納していたり、払わないという意志表示をしているような場合)に適用されるものであり、貸し手の一方的な「無催告解除」による強制退去が裁判で認められる可能性は、かなり制限されています。

貸し手は何度か催告、つまり「家賃を支払って」と督促をしない限り、裁判で勝つことが難しいのです。

したがって、家賃を滞納するとまずは大家さんや不動産屋さんから支払に関する督促が来ることになります。督促をしても滞納された家賃の支払いがなされない場合は裁判となります。

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大家さんからの督促方法とその期間

大家さんの考え方にもよりますが、一般的には以下の流れで督促が行われます。

  • ① 電話や手紙(ハガキ)、訪問による督促
  • ② 保証人への連絡と督促
  • ③ 内容証明郵便による督促
  • ④ 契約解除の通知

それぞれどのようなものか確認していきましょう。

① 電話や手紙(ハガキ)、訪問による督促

最初の「払ってください」という督促になります。大家さんにもよりますが

  • いつ支払うということ
  • 翌月以降は支払えるということ

が明確に伝えられれば、大事に至らない可能性が高いと言えます。

もし延滞をしてしまって督促が来たら、必ず真摯かつ正直に相談しましょう!

② 保証人への連絡と督促

督促を無視するなど大家さんが不安を感じると、保証人へ連絡することになります。単に知らせるだけではなく、滞納家賃を保証人に請求する可能性もあります。親類縁者などに保証人をお願いしている場合にはその方に迷惑をかけることになります。

また、家賃保証会社が保証人となっているケースもあります。この場合、家賃保証会社が滞納家賃を立て替えることになります。もちろん、それで解決とはなりません。今度は家賃保証会社が債権者となり、債務者である滞納者から立て替えた滞納家賃を回収します。

家賃保証会社が保証人の場合、個人の大家さんと比べると回収は確実に厳しくなりますし、裁判への移行も短期間で行われる可能性が高くなります。

③ 内容証明郵便による督促

それでも滞納家賃の支払いが行われないと、内容証明郵便による督促が行われます。これは「どんな内容の文書を、いつ、誰から誰宛に差し出されたか」を郵便局が証明するサービスとなります。

先程記載したとおり、基本的には催告(督促)を十分にしたという実績を残さないと、強制退去の要求や契約解除が裁判では認められない可能性が高くなります。したがってこのような証拠を残すわけです。

言い換えれば、滞納家賃を回収するだけではなく「もう出ていってほしい」と大家さんが考えている段階と言えます。

④ 契約解除の通知

さらに督促を無視した場合、契約解除の通知がなされます。

「出てってください」

ということです。大家さん、または大家さんの弁護士などから届くことになりますが、これは賃貸借契約書の内容に基づいた、貸し手側からの意志通知となります。契約は両者(貸し手と借り手)両方の合意に基づき実行・維持されるものですので、借り手が契約解除に合意しない場合は裁判となります。

目安は3ヶ月くらい〜あとは大家さん次第

延滞し始めてからどれくらいの期間で契約解除の通知となるのでしょうか?

大家さん次第ではありますが、目安となる期間は3ヶ月ほどとなります。

国土交通省では、大家さん向けに「賃貸住宅標準契約書」というものをWebで提供していますが、そこでは以下主旨の内容が記載されています(分かりやすく多少意訳しています)。

貸し手が相当の期間を定めて家賃の支払いを催告したにもかかわらず、その期間内に家賃が支払われないことによって賃貸借契約を継続することが困難であると認められるに至ったときは、本契約を解除することができる。

ここで記載されている「相当の期間」が何ヶ月なのかが気になるところですが、裁判で大家さんが勝つ事例を見ると3ヶ月分以上の家賃滞納が多いようです。

過去に滞納を何度もしている場合は、3ヶ月未満でも解約通知が送られる(大家さんが裁判も辞さないと覚悟する)可能性もありますし、逆に優良な借り主と大家さんの信頼が得られていれば、なにか事情があって滞納しても待ってくれる可能性もあります。

つまりは、民間人(民間会社)同士の契約ごとに基づく取引行為である以上、お互いの信頼関係が維持できるか崩壊するかにかかっているということになります。

家賃を滞納してしまったら、督促は絶対に無視してはいけません。大家さんや不動産屋さんと今後の支払い予定などを話し合って信頼関係の維持に努めましょう!

絶対に避けたい〜裁判による訴訟

裁判では、強制退去や滞納家賃だけではなく、家賃の遅延損害金も要求されることになります。家賃を3ヶ月分以上滞納している場合、勝てる可能性は非常に厳しいものとなります。家賃を払うだけでも厳しい状況だったのに、遅延損害金や退去のための引っ越し代もなんとかしなくてはいけない、そんな状況になりかねません。

絶対に避けたい裁判の訴訟ではありますが、もしそのような状況になってしまった場合、強制退去までの流れは基本的に以下のようになります。

  • 大家さんからの申し立て
  • 「信頼関係の破壊」に関する裁判
  • 判決に基づく大家さんからの強制執行申し立て
  • 退去の督促と強制執行

まずは、大家さんから裁判所へアパート・マンションの明け渡しや滞納家賃、遅延損害金の支払いに関する申し立てが行われます。申し立てを受け、裁判所は借り手に訴状を送ります。つまり、借り手は民事訴訟で訴えられたということになります。

裁判では、「相当の期間」を通じて催告されたか、つまりこれ以上督促しても意味がないという結論に至るほどに信頼関係が崩壊していしまっているかが問われます(「信頼関係の破壊」といいます)。

信頼関係の破壊が裁判で認められれば大家さんの勝ちとなります。大家さんは賃貸借契約の解除が可能となり、立ち退きを要求することができるようになります。退去日は大家さんと借り手との協議になりますが、もし退去日の合意ができないと、大家さんは裁判所へ強制執行の申し立てをすることになります。

強制執行の申し立てが行われた場合、裁判所から1ヶ月以内の退去が命じられるため、もはや退去日の調整はできなくなります。

裁判とならないためにできること

強制執行による退去となると、次に住む場所も見つけられず、現住所がなくなってしまう危険性があります。これから職を見つけようとしている場合、現住所がないことは致命的なリスクとなります。

また、次回のアパート・マンション契約の時にも現住所がないと厳しいものとなります。賃貸借契約でトラブルがあったと見抜かれたら借りることができなくなります。

家賃の延滞をしないことが一番ですが、それでも支払いが遅れてしまいそうな場合は、裁判とならないようにできるだけのことをする必要があります。

「一時的な支出の波でたまたま今だけ家賃の支払いが厳しい」ということであれば大家さんに分割払いによる支払いのお願いをすることで受け入れてもらえる可能性があります。また、カードローンを契約済みであれば、うまく利用することで一時的な支出の波を平準化させることができます。

ただし、分割払いやカードローンによる支払いは、あくまで一時的に家賃が払えないだけで、年間で見れば黒字のケースに限ります!

これは絶対です。

常に支払いがキビシイ状況の中で家賃の分割払いやカードローンの利用を続けた場合、負債がどんどん積み上がっていきます。その場合は、生活の支出を見直すか、家賃の安いところに引っ越すかを検討すべきです。特に引っ越しなど生活環境を変えることは面倒なことでもありますが、放置しておくと大変なことになります。

賃貸借契約は当事者間の信頼関係があって成立するものです。もし支払いが厳しいようなら大家さんや不動産屋さんと早めの相談をして円満な解決を目指しましょう!

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