国民年金を払えない人はどうすべき?滞納と免除の違いを解説!
国民年金制度は、日本の財政の中心的な制度でもありますが、昨今の少子高齢化を受けて、国民の中には「払う人より貰う人が多すぎて破綻しそうだから、払わない方が将来的に得になる」と考える人も少なくありません。
今回は、国民年金を納めない未納のデメリットと、納めなくてももらえる免除の制度の説明と、この両者の違いについて解説していきます。
国民年金を払わない人の理屈と滞納者に対しての国の対応
国民年金の保険料は、毎月約1万6千円程度と決して安くありません。経済的に厳しい人でなくても、年金制度の存続に疑問を持っている人は律儀に払いたくなくなる額です。
かつて年金は誰しも当然のように保険料を支払っており、未納者は数えるほどしかいませんでした。年金がなぜここまで信用を失ったのかというと、国民の人口バランスが変化し、払える人が減るとともに、医療の発達で年金をもらう人が長生きすることによって、年金が賄えなくなるのではないかという疑念が広がったためです。
特に、年金を払いたくないのは現在の若年層であり、彼らの多くは「自分たちが貰える額は払った額よりも少なくなる」と考えています。
年金は今では「自己投資」の一種なのです。つまり、自分の将来に対して年金保険料という投資をして、将来年金というリターンを得るビジネスに近い考えなのです。
ところが、年金の制度は徐々に変わってきています。若者は、受給年齢を自由に変更できるという制度が、体の良い支給額減らしだと気づいているのです。
これはあくまで年金崩壊の序曲に過ぎず、自分たちが貰うころ、つまり30年後や40年後には年金制度が存在しているとは考えていないのです。
「貰えそうにない年金の保険料を納めるなど愚か者のすることだ」、これこそが、今の国民年金の未納者の根本的な主張なのです。
しかし、国民年金は納めたくないから納めなくて済むような仕組みではありません。貯蓄などは、したくなければそれは個人の自由ですが、国民年金保険料の納付は義務なので、勝手に納めることを放棄すれば、当然国はそれに対処してきます。
【関連記事】
滞納しても結局回収されるだけ?現在の国の対応は厳しい!
国民年金保険料は、未納であれば国が徴収にきます。強制徴収と言われるこの制度は、ある程度の年収(年収300万円以上)がある世帯で一定期間(13ヶ月)国民年金の納付をしていない者がいると、催促をしてくるようになります。
この状態になると、個人の意思で抗うのは不可能になります。相手は法的な効力を持つ「国民年金保険料納付勧奨通知書」という、言わばこれ以上ごねるなら実力行使をするぞという最終通告をした後に、差し押さえ通知書を発行し、未納者の親族、未納者の勤務先、未納者の預金口座などから強制的に未納保険料を回収していきます。
つまりこれらのことから、現在では未納状態でしらばっくれることは事実上不可能であるという結論になります。
しかし、保険料を納める経済的余裕が無い人は、未納状態にせずに、合法的に保険料を減額する方法があります。これが、今回知っておくべき最重要テーマとなります。
未納ではなく支払い義務自体を無くせる納付免除とは?
国民年金保険料を支払うだけの経済的余裕が無い、あるいは生活が困窮していて保険料を納めることが出来ないといった人もいます。
国民年金保険料は、条件を満たしたうえで年金機構に申請すれば、保険料の納付義務が免除、または納めるべき金額が、4分の3、半分、4分の1になる制度があります。
十分な収入があっても年金を信用できないと考えて未納である人は、気持ちはわかりますが納付しないとさらに損失を出すだけ(滞納期間中に発生する延滞利息も余計に払う羽目になる)なので、大人しく払っておく方が賢明です。
国民年金保険料の例外は、大きく分けて、「免除・減額・猶予・未納」の4つに分類されます。
このうち、免除と減額は支払うべき保険料そのものを減らす手続きをすることで、「保険料を支払った状態」にすることが出来ます。
猶予とは、国民年金保険料を支払う期間が本来なら20歳からのところを、収入を得ていないことなどを理由として、先延ばしにする制度のことです。これはあくまで本来払うべき金額を先延ばしするだけで、金額自体は変わりません。
そして未納ですが、先述したように、強制的に差し押さえなどで回収する人の条件は、年収が300万円以上なので、それに満たない場合は差し押さえはされません。
では、年金が未納状態であると、具体的にどのようなデメリットがあるかを知っておきましょう。
年金は実は3種類?年金保険料が未納だと何に困るのか
年金が未納状態だと、当然ですが、年金を受け取ることが出来なくなります。そもそも、年金を意図的に払わない人は、年金のシステム自体を信用していないので、実際のところ、もらえないと知っているし、大して気にしていません。
国民年金だけならこれも一つの選択だと考えられるのですが、未納状態で自身が損をするのは国民年金だけではありません。
国民年金を納めることで将来受け取ることに関係するのは、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類があります。
つまり、年金保険料を納めていない状態で万が一、怪我や病気等になって障害年金を受け取る条件を満たしても、国民年金保険料が未納だと、障害年金も受け取ることが出来なくなるのです。
同様に、遺族年金を受け取る資格も国民年金保険料を納めている人のみです。未納になっても困るのは国民年金だけだと考えている人が非常に多く、いざ、残り二つを申請したら、実はこれを受け取れなくなっていたという事態にならないように、納付義務を果たしておくべきなのです。
もちろん、これら全てが必要ないと考えている人は、納付意思が変わることは無いでしょうが、先述したように、収入基準と滞納期間が基準を超えている場合、未納で逃げ切ることは極めて困難です。面倒なことになる前に未納状態を脱した方が良いのは言うまでもありません。
保険料免除や減額を申請する際に知っておきたいこと!
国民年金の保険料は、収入基準が一定水準を下回る場合、本来納めるべき金額を減らしたり、全く納めなくてもよくなる免除減額制度があります。
免除と未納は似ているようで全く違います。未納とは、文字通り「未だ納めていない」ということで、義務(納付)を果たしていないので権利(年金を受け取れる)が発生しない状態のことです。
免除は、保険料を1円も納めていなくても「年金を受け取れる権利」も満たせるという点において、非常に有効な手段です。
経済的に厳しくて、国民年金保険料が納められないというのであれば、絶対に未納よりも免除の方が良いでしょう。免除にするためには、その世帯の収入がかなり低いことが条件になります。
免除になるために求められる具体的な条件ですが、前年の所得額が、(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円という金額未満であることです。この金額計算式は、免除に必要な条件です。
4分の3減額、半額、4分の1減額に必要な式は別にあり、それらは全て、「日本年金機構」という機関のホームページなどに記載されています。簡単に言えば、収入が低いほど保険料を納める金額が小さくなるということです。
保険料を納める金額が減ったら貰える金額も減るの?
さて、毎月16000円納めた人と、毎月4000円納めた人(もしくは免除で全く納めなかった人)が、将来同じ額の年金をもらったら、不公平だと感じるのではないでしょうか。
当然政府もこの問題については対処しています。簡単なことですが、免除や減額制度を利用した人がもらえる年金の額は、満額を保険料として納めた人よりも少なくなります。
では、免除や減額を利用し、いざ年金を受け取る段階にどのくらい貰えるのかという話になります。先に結論だけ言ってしまうと、免除や4分の3減額を利用した場合、国民年金だけで生活しようという考えは捨てるべきです。というか、現実的ではありません。詳しく見ていきましょう。
収入減が年金だけの生活は無理?免除制度の注意点
年金保険料を免除または減額し納めた際に、もらえる額は満額時に比べてどの程度のなるのか、おそらく、この制度を利用しようと考えている人が、最も関心があると言ってもいいのがこの部分でしょう。
保険料が免除になった人が将来貰える年金額は、満額納めた人のちょうど半分です。
ちなみに、40年間満額の保険料を納めた人が貰える老齢年金(一般的な年金)は年額779300円です。一方、40年間全て免除した場合、もらえる金額は年間389700円です。
ことことから分かるように、納付期間全てを免除で過ごした場合、年金自体は確かに貰うことが出来ますが、その額は毎月32000円程度であり、所謂極貧生活状態でないと年金だけの生活は不可能な水準です。
半額免除の場合は、もらえる年金は、満額納付時の4分の3になります。毎月の支給額は48000円程度で、つつましく生活して少し厳しい程度でしょう。
年金の免除・減額制度を利用する上で心しておくことは、あくまで経済的な困窮によって保険料が納められない者を未納状態にしないための制度であって、老後生活を保障する制度ではないということです。
生活が立ち行かないときに頼るのは「生活保護制度」であり、これらを混同してはいけません。これを理解した上で、保険料未納を避け、年金の家計負担を少しでも解消したいときに利用しましょう。
無論ですが、この制度を利用するのは義務ではありません。収入がたとえ免除基準に達していても、何とか保険料を満額納めたい人もいるでしょう。きちんと全て納めることが出来れば、受領時には満額受け取ることが出来ます。
あくまで選択するのは国民一人一人の自由です。しかし、免除が出来るのに未納であるのはデメリットしかありませんので、これに該当する人は免除の手続きをすることを勧めます。