滞納・未払い・差し押さえ

差し押さえまでの7ステップ!国民健康保険の滞納が引き起こす悲劇

国民健康保険の滞納を放置すると、給与や預貯金の差し押さえをされる事があります。医療保険の滞納は、まず保険証の利用制限、利用停止などの安全な生活に大きな影響がでます。さらに滞納を放置すると、差し押さえの強制執行へと移ります。

市区町村が行う差し押さえは、地方税法によって大変強制力のものとなっており裁判所などの通知が届くことなく執行されてしまいます。国民健康保険を滞納し、実際に差し押さえられるまでの流れとその悪影響についてお話ししていきたいと思います。

国民健康保険の差し押さえと保険証の利用停止

国民健康保険を滞納すると、法律によって差し押さえが実は簡単にできるようになっています。しかし、執行されるまでのプロセスはある程度決まっているので、もし差し押さえをされるとしても1年以上の期間を有します。

また滞納トラブルは、保険証の利用制限や利用停止などにも発展していしまいます。では実際に2つの体験談から、差し押さえと無保険者(長期の滞納者で保険証を返還した人)についてご理解を深めて頂きたいと思います。

国民健康保険の差し押さえは、アッという間に行われる

国民健康保険の差し押さえは、急に行われます。家賃や消費者金融の差し押さえは、通常、裁判所から予定日を通告されます。しかし、それが無いのです。

<ある主婦の体験談>
旦那さんが、職人系の仕事をしていて収入が安定しませんでした。その為、国民健康保険の支払いが厳しく2年前から度々滞納をしていました。それでも役所の相談窓口で分納での返済を月々行い、何とかしのいでいました。このままではまずいとパートに出て奥さん自体も収入を得ようとしましたが、つい忙しさから分納の支払いを数回忘れてしまいました。すると、ある日いきなり口座が差し押さえられてしまったのです。あわてて相談窓口に行ったのですが、「お金を返金する事は出来ません」と差し押さえられた口座のお金は返却して貰う事が出来なかったそうです。滞納した方が悪いとは言えますが、生活が苦しい中での差し押さえは本当に辛いものだったそうです。

市区町村によっては交渉する事で可能かもしれませんが、一旦差し押さえられるとほぼ返金などの処理はされないと思った方が良いでしょう。

この方の場合、滞納分を少しずつ返金していたとしても2年程の滞納金がありました。また、滞納分は1年以内に返す事が望ましいと言う話も自治体によってはあるようです。これまでの経緯から返済する意思が少ないと判断され返金に応じなかったのかもしれません。

あくまでも細かな部分は役所の判断なので、もし同じような状況になった場合は1度相談窓口に行かれてみるのも良いと思います。ただ覚えておくべき事は、相談しアドバイスを貰ったらそのアドバイスなどは必ず守る事です。

役所は、約束を反故される事をかなり嫌う傾向にあります。

滞納している時点で、お金に困窮している事は役所も分かっていると思います。相談内容はしっかり守り、差し押さえを出来る限り回避するようにしなくてはいけません。

無保険者の恐怖!本当に手遅れになってしまう

差し押さえも大きな悪影響がありますが、保険証の利用停止によって無保険者になってしまうのも大きな悪影響があるのです。

<70歳の老人の話>
この老人は、道端でうずくまっているところを市の職員に発見され、診療所へ急患として連れて行かれました。心電図や胸部レントゲンなどで調べたところ、左肺胸水貯留(水が溜まっている事です)があり、肺がんも疑われたため病院に緊急入院となりました。ただ、翌日に急性心不全で残念な結果となってしまいました。この方は定年退職後、トラブルなどで国民健康保険の滞納から無保険者となってしまっていたようです。

無保険者の方に多く見られる傾向ですが、国民健康保険の補助が受けられない為に医療費の負担が気になり病院にいく事を避けるようになります。つまり、限界まで我慢をする傾向にあるのです。

その為、病院で見て貰った時には手遅れと言うケースが後を絶ちません。差し押さえも怖いですが、国民健康保険の滞納トラブルは保険証の利用停止から発生している物も多々あります。十分注意して下さい。

※全日本民医連では、2016年「経済的事由による手遅れ死亡事例調査」報告 【無保険・資格証・短期証】34事例と言うレポートがダウンロードできます。

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国民健康保険の差し押さえまでの流れと無保険者を理解する

国民健康保険の滞納は、差し押さえや保険証の返還という最悪な結果に繋がる事もあります。そうなれば、生活も大変苦しい状況になります。

そうならない為にも、まずは国民健康保険の滞納から差し押さえまでの流れと、滞納から無保険者までの流れの2つについて確認していきたいと思います。

差し押さえまでの7ステップ!滞納からの流れを知る

滞納から差し押さえまでを、7ステップにまとめました、

1.滞納

2.催告(電話、はがき、訪問などで催促)

3.短期被保険証の交付(保険証の返還)

4.被保険者資格証明書の交付

5.保険給付の停止

6.差し押さえ予告書

7.差し押さえ

滞納は、最初の支払日の翌日からとなります。催告は、滞納分を支払って下さいと言う催促の連絡です。この催告は、定期的に行われます。

短期被保険証とは、有効期限が短くなった保険証です。滞納から半年~1年以内に交付されます。交付の時期については、市区町村によって違いがありますので明確な交付期限については最寄りの役所でご確認下さい。

被保険者資格証明書とは、病院などの窓口で医療費の負担ができない保険証となります。滞納を1年以上すると交付されます。

利用方法は一旦全額自己負担し、後日申請して7割の金額を給付して貰います。手間が掛かるのと、後日貰えるとは言えその場での全額負担はかなり辛いと思います。

国民健康保険の滞納が1年6カ月以上経過すると、保険給付の停止となります。被保険者資格証明書は全額負担でも申請すれば7割還ってきました。

しかし、この保険給付の停止は返金はありません。7割は滞納している金額に充てられます。そして差し押さえ予告書が届いたら、いつ差し押さえられてもおかしくありません。

差し押さえの日付は分かりませんので、ある日突然差し押さえられてしまいます。

1年半で無保険者!国民健康保険の滞納からの3つの段階

通常は、差し押さえられる前に無保険者になります。無保険者とは医療保険に未加入、もしくは保険給付の停止を通達された方の事を指します。

①滞納日↓(滞納日から半年から1年以内)

②短期被保険証の発行

↓(滞納日から1年以上経過)

③被保険者資格証明書の発行

↓(滞納日から1年半以上経過)

④保険給付の停止

<短期被保険証>
滞納が6カ月以上半年未満の場合、市区町村の判断で交付される保険証です。短期被保険証であっても、一般の保険証と同様に、医療機関で3割での診療が受けられます。

但し、有効期限が短く3~6カ月程度で更新となります。更新は、役所の窓口にて行う事になり更新時には滞納の支払いについて確認をされます。

<被保険者資格証明書>
滞納期限が1年以上になって来ると、被保険者資格証明書が交付されます。これは、医療費を一時的に全額負担する事になります。その後、申請をすれば7割還ってきますが手間も時間も掛かります。

ただ、実際は滞納している分と相殺される事もありますので、戻ってこない可能性も考慮しておかなくてはいけません。

<保険給付の停止>
国民健康保険の滞納を1年半経過すると、保険給付の停止となります。これで、病院などで治療を受けても医療費は全額自己負担となります。

通常の免除分の7割は、滞納分に充てられます。

差し押さえは滞納から1カ月で行える!滞納の危険性を知る

国民健康保険の滞納は、厚生省のデータによると平成29年度は289.3万世帯あると試算されています。また、これは全体の納付者からすると15.3%の割合となっています。

この数字を多いと感じるのか、少ないと感じるのかはそれぞれの判断となりますが、差し押さえにかかる期間が実は最短で30日程度だと聞いた時、どのように感じるのでしょうか?

差し押さえについて、詳しく見ていく事にしましょう。

差し押さえとは何か?国民健康保険の法的手続き

基本的に差し押さえとは、滞納分の補填に充てる金銭を強制的に押さえる事を言います。

  • 給与
  • 預貯金
  • 生命保険
  • 不動産・株
  • 競売で売れそうなもの

これらお金に換えられそうなものを差し押さえ、金銭に換え補填する訳です。給与や預貯金などは、そのまま滞納額が相殺されるまで押さえられてしまいます。生命保険などの解約は長年かけている方にとっては大きな損失でしょう。

また不動産屋や株など、手元に置いておきたくても差し押さえられてしまえば手放すしかありません。あとは、競売に掛けられるものを押収された場合はその売却益で補填される事になります。

行政の差し押さえは、地方税法によって定められています。国民健康保険の滞納による差し押さえは、地方税法329条と331条の1項によって実行可能な期間が定められています。

それによれば、督促状を滞納した日から20日以内に送り、督促状を受取って10日以内に支払いが無ければ差し押さえが可能というものです。つまり、最短で1カ月の期間で差し押さえられるという訳です。

但し、国民健康保険の滞納でそのような短い期間で差し押さえらる事はありません。まずは、短期被保険証の発行、被保険者資格証明書の発行、保険給付の停止経て、差し押さえ予告書が郵送されます。

この差し押さえ予告書こそ、督促状にあたります。

つまり、差し押さえ予告書が郵送されて来れば最短で1カ月程度で差し押さえが失効される事を意味しています。

差し押さえの流れを知る!滞納分は5つの流れで回収される

差し押さえは、厳密には下記のような過程を経て滞納金の回収をします。

①.督促状の送付
②.財産調査
③.差し押さえ
④.換価・公売
⑤.補填

督促状は、差し押さえの予告通知です。この段階で、滞納分の支払いができれば差し押さえを止める事が出来ます。もし支払う事が出来なければ、財産の調査を自治体は行っていきます。

財産調査は自治体が独自に、勤務先などに給与明細の提出を依頼したりして収入を調査したりします。この際、会社にバレるなどの場合もありますので注意が必要です。

その後、差し押さえられた金銭、または競売できそうなものをお金にして滞納分に補填する事で差し押さえは完了となります。

差し押さえられたらどうする?3つの対処法を把握する

いざ差し押さえをされてしまったら、どうしたら良いのでしょうか?当然、差し押さえを解除もしくは、差し押さえられたお金の返金を望むと思います。

ただ、差し押さえられた金銭はまず戻ってきません。また差し押さえが完了しても、滞納分の回収が出来なければ給与や預貯金の差し押さえは解除されません。国民健康保険の差し押さえをされた場合、どうすれば良いのか?お話ししていきたいと思います。

差し押さえを回避する2つの方法

差し押さえを事前に知る事ができます。それが差し押さえ予告書です。正確な執行日は分かりませんが、これを受取ったらすぐに3つの行動を考慮して下さい。

  • ①滞納金を払う

1つ目は、お金を集めるです。あたり前の話ですが、滞納分は消える事がありません。国民健康保険にも時効が存在しますが、ほぼ成立する事はありません。

役所から一切の連絡が無い状態が5年間続けば、時効が成立します。逆に言えば、はがきや督促状などの連絡を受取った時点でその条件は満たせない事になります。

さらに言うと、督促状などを受取ると、「時効の中断」が成立しそれまで経過した時効期間は全て無かったことになり、その日から再度5年の時効期間が開始する事になります。つまりほぼ時効の成立は不可能な訳です。

滞納金を払う事が、差し押さえされそうな方にとってどれだけ大変な事なのかは分かっています。しかし、親や負業者などからお金を集める事をもう1度考え、差し押さえだけは回避する事も考慮してみるのも良いと思います。

但し、無計画にお金を集めても金銭トラブルに発展するだけなので慎重にお考え下さい。

  • ②換価の猶予

国民健康保険を支払う事で、生活の維持を困難にする恐れがあるなどの一定の理由を認められる時は、納期限から6カ月以内に、市に申請することにより1年以内の期間に限り差し押さえまたは差押済財産の換価(売却)の猶予が認められる場合があります。

差し押さえを、事前に止める事を考慮するのも1つの手です。但し、6カ月以内という期限がありますので注意しましょう。

※また国民健康保険以外に既に滞納となっている税金などがある場合は、申請する事が出来ませんのでご注意下さい。

国民健康保険の滞納トラブルは、市区町村の窓口で相談する

これこそ、滞納トラブルの最も有効な対策です。それは、役所に相談すると言う事です。最寄の役所の窓口にて、「滞納しそう」「滞納してしまった」時にアドバイスや今後の返済の相談をしましょう。

  • ③窓口への相談

ホームページを確認すれば、営業時間やメールでのお問い合わせもありますので自分にとって都合の良い時間を1度考えてみてみましょう。

特に相談内容は、以下の3つに重点を置きましょう。

◆分割で支払う
◆免除を相談してみる
◆猶予をお願いしてみる

滞納しそうであっても、滞納しても、一括で支払う事がきつい場合は分割での納付を進言しましょう。国民健康保険は、保険証の利用制限も生活にかなり影響してきます。少しでも払い、今後の負担を軽減できるよう少しずつでも対処していきましょう。

免除については、相談員とよく相談しましょう。失業、病気、などの特別な事項である判断されれば良いアドバイスを頂けると思ます。

支払える期日がある程度把握できているなら、その日まで支払いの猶予を伸ばして貰う事も検討しましょう。きちんと事前に相談すれば、1カ月程の猶予など案外簡単に貰えると思います。

またその際、逆に分割などを提案される事もありますので担当の方とよく相談してみて下さい。

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