滞納・未払い・差し押さえ

7つのデメリットを回避する!国民健康保険の滞納トラブル

国民健康保険を滞納する事で、様々なデメリットを被ります。保険証の利用制限であったり、保険給付の停止や遅延損害金の支払いであったり、差し押さえであったり滞納トラブルは生活に大変影響が多いものばかりです。

国民の誰もが、何かしらの保険に入りその恩恵を受けています。ただ、様々な理由により収入が減り保険料が支払えなくなっている方も増えています。国民健康保険を滞納すると、どうなるのか?

滞納から保険証の利用制限、そして差し押さえなどについてお話ししていきます。

高齢化と医療費の拡大!国民健康保険の滞納問題の深刻化

今後、高齢化社会となり医療費が拡大していく中、それを支える労働人口が下がり増々保険料の支払いについて不安が大きくなっています。

国民健康保険は、自営業者や林業の方、無職の方が利用する保険です。国民全体の20%弱が国民健康保険を利用していますが、内16~18%程(平成26~29年度)が滞納している状況です。

平成30年から、国民健康保険が変わりました。国民皆保険制度の基本と、それを支えている物が一体何であるのかお話ししていきたいと思います。

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相互扶助の精神で、誰でも受けられる医療制度が国民健康保険

「誰でも」「どこでも」「いつでも」保健医療を受けられる体制を、国民皆保険制度と言います。1958年に国民健康保険法が制定され、1961年に全国の市区町村で国民健康保険事業が始まりました。3割は個人が、残りの7割を事業主や国民が負担する相互扶助の精神を反映した制度です。

現在、医療保険は5つに分ける事が出来ます。

①健康保険 → 会社員が加入している保険
②各種共済保険 → 公務員が加入している保険
③船員保健 → 船員が加入している保険
④後記高齢者医療制度 → 75歳以上が加入している保険
⑤国民健康保険 → 上記以外の全ての方

国民健康保険は、保険制度の受け皿的な存在です。病院などの窓口で保険証を提示するだけで、医療費が3割負担で済みます。保険証1枚で、誰もが安心して医療が受けられる訳です。しかし、平成30年からこの国民健康保険が少し変わる事になりました。

その原因が、財政難です。

289.3万世帯!国民健康保険の滞納世帯数

国民健康保険を滞納している世帯数は、厚生労働省が出している「平成28年 国民健康保険(市町村)の財政状況について」に記載されています。

滞納世帯数 289.3万世帯
短期被保険者証交付世帯 82.4世帯
資格証明書交付世帯 18.3世帯

※短期保険者証とは、通常の保険証より有効期限が短い保険証で、資格証明書とは、病院の窓口で医療免除が受けられなくなる保険証です。

どちらも滞納が長期化すると、交付されます。

28年度の国民健康保険の滞納数は、全体の15.3%となっています。

これはかなりの数に上ります。また高齢化に伴い、年々医療費が上がっています。

2005年 33.1兆
2015年 42.3兆
2025年 61.8兆

これからも医療費は、拡大する事が予想されています。この状況を見て財政基盤強化策として、平成30年から国民健康保険が変わる事になりました。その変更点は、以下の2つとなります。

  • 都道府県が運営に参加
  • 補助金が3400億円となる

国民健康保険を維持する為には、どうしても保険料という運営費が必要になります。だからこそ、国民健康保険の義務を怠る事は、どのような理由であっても国民健康保険制度の基盤を揺るがす問題となる訳です。

その為、国民健康保険の滞納は大きな問題として取り扱われる訳です。

滞納すれば利用できなくなる!様々なデメリットを知る

それでは実際に、国民健康保険を滞納するとどのような事になるのかお話ししていきたいと思います。主なデメリットは、全部で5つあります。

入院や通院に大きな影響が出たり、様々なサービスが受けられなくなったりします。1つひとつ見ていきましょう。

1年半の滞納で無保険者!保険証の利用制限を理解する

国民健康保険の滞納は、最終的に保険証を役所へ還さなくてはいけなくなります。また、滞納によって現在使用している保険証とは別の保険証が交付され、それを利用する事になったりします。

①短期被保険者証

各自治体によって違いますが、滞納した期間が半年から1年未満で交付されます。通常の保険証とほぼ変わりが無いのですが、有効期限が3~6カ月となっています。

※ある地域では、5か月だったりするようです。

普通は1年の有効期限なので、有効期限が短いため手間が掛かります。

また、有効期限が切れるたびに窓口にて手続きをしなくてはいけないので、その都度滞納分の支払いを求められます。

②被保険者資格証明書

短期被保険者証を交付されても滞納を続けると、被保険者資格証明書の交付がされます。最初の滞納から、1年ほどの期間を経ると交付され短期被保険者証を返還しなくてはいけません。

この被保険者資格証明書は、窓口での医療費免除がありません。1度、全額自己負担として支払い後日、申請する事で7割の部分を支給される事になります。滞納している方にとっては、この一旦自己負担する事は大きな壁となります。

実際、窓口で支払えないからと病院へ行くことを我慢する方もいます。そして、その結果、痛ましい最後を遂げられると言うケースもあります。そのような事態を避ける為、被保険者資格証明書の交付は「特別な事情がある」とされれば見送られる事もあります。

※特別な事情とは、災害、失業、病気など支払う事が困難だと判断された場合です。詳しくは、お近くの自治体に確認してみて下さい。

③保険給付の差し止め(無保険者になる)

最初の国民健康保険の滞納から、1年半過ぎると保険給付の差し止めが可能となります。もし差し止められると、医療費は全額負担となり申請しても7割は還ってきません。

その、7割の返還部分はそのまま滞納した金額に充てられる事になります。この段階で、保険証がない無保険者となり医療全般にかなりの負担を持つ事になります。入院、通院などに大きな影響が出て、健康な生活にかなり支障をきたす事になります。

更なる4つのデメリット!様々な損失が降り掛かる

他にも、国民健康保険の滞納は様々な被害をもたらします。

①特別療養費・高額療養費制度が受けられない可能性
②出産一時金が受けられない可能性
③損害遅延金が発生する
④差し押さえられる可能性

手術、出産、通院など、通常の医療費より高額な治療を受ける際、自己負担限度額を超えた額を払い戻す事が可能となります。また払い戻せると言っても負担分が気になる方は、事前に「限度額適用認定書」を役所でこうして貰い病院の窓口提示すれば、自己負担分のみの支払いで済みます。

滞納していると、このサービスが受けられないかもしれません。出産一時金も、滞納期間などや自治体によっては難しい可能性が出てきます。この点は、各自治体によって対応が違いますのでその都度確認する必要があります。

また、高額療養費控除や出産一時金の申請をした場合、その金額がそのまま滞納分に充てられる事もありますのでご注意下さい。

損害遅延金の発生。1カ月の滞納なら2.8%と低いのですが、それ以降は8.9%となり滞納すればするだけ重く圧し掛かってきます。

滞納が長期化し相談なども無い場合は、財産の差し押さえをされる可能性があります。

国民健康保険の滞納分は、差し押さえで回収される

それでは、国民健康保険を滞納してから差し押さえられるまでの流れを確認していきましょう。どのような事が行われ、保険証が利用できなくなっていくのか、またどれくらいの期間で差し押さえられるのかも把握して下さい。

また、市区町村の差し押さえは、大変強制力のあるものです。この点も、お話ししていきたいと思います。

滞納から1年6カ月!差し押さえの恐怖が迫っている

滞納から差し押さえまでの流れは、全部で7ステップあります。

1.滞納

2.催告

3.短期被保険証の交付

4.被保険者資格証明書の交付

5.保険給付の停止

6.差し押さえ予告書

7.差し押さえ

滞納は、国民健康保険を支払う期日の次の日から始まります。その後は催告といって、電話、はがき、訪問などを通じ滞納分を支払うよう催促の連絡が来ます。

これを放置すると、半年から1年未満で短期被保険証の交付となり、さらに放置すれば最初の滞納日から1年弱で被保険者資格証明書の交付となります。

その後も支払いを放置すると滞納から1年6カ月目以降、差し押さえ予告書がいつ来てもおかしくない状態となります。

地方税法によって、滞納1カ月後には差し押さえられる

国民健康保険の差し押さえとは、個人が所有する財産から滞納分を回収しようとする行為です。

①給与
②預貯金
③競売掛けられる物

主に、給与や預貯金など現金を差し押さえられるケースが多いです。自宅にある物を差し押さえられ、それらを競売に掛け売却益を滞納分に充てる事もあります。

市区町村は地方税法によって、差し押さえを行います。これは裁判所の命令が要らない事を意味しています。国税徴収法と同様、大変強力な強制力がありますので滞納は避けなくてはいけません。

滞納金の差し押さえについては、地方税法331条に記載されています。

<地方税法331条>
町村民税に係る滞納者の財産を差し押えなければならない。督促状を発送してから10日経過しても滞納金の支払金が無い場合は差し押さえが可能である。

重要な点は、「差し押さえなければならない」と言う強い言葉と「督促状を発送してから10日以内に支払い」が無ければ差し押さえが可能だと言う点です。督促状は滞納から20日以内に出す事が地方税法で決まっています。

つまり、最短で1カ月程度で差し押さえは法律上可能となります。ただ、あくまでも可能と言うだけであって、実際にそのような短期間で差し押さえられる事はまずないでしょう。

また給与を差し押さえられると地方税法によって算出されますが、おおよそは給与の4分の1が目安となります。民事執行法のように、給与の4分の1と決まっている訳ではないのでご注意下さい。

国民健康保険の滞納トラブル!注意点と解決策を把握する

経済的不安や失業、その他多々理由はあると思いますが滞納してしまう事もあると思います。1カ月や2カ月の滞納なら、生命の危機に直結する国民健康保険の利用にあまり影響はありません。

ただ、滞納から保険証の利用制限へと移行していく方は、多くの場合放置してしまう傾向にあります。また、引越しや結婚などで住所や姓が変わるとなぜか時効を気にされる方がいます。

そこで、時効と滞納問題の解決策についてお話ししていきます。

滞納時の疑問?時効はほぼ不可能!

「引越しした時、滞納分はどうなるんだろう?」「結婚すると、名前が変わってしまうから滞納分の支払いはしなくていいの?」など、たまにこういった疑問を聞いたりしますが、滞納金は消えません。引越し先の役所で住所を変更すれば、ちゃんと後日ご自宅に督促状が届きます。

また結婚しても、同様にご自宅に届く事になります。「では、国民健康保険は時効があると聞いたんですが?」と時効について気になる方もいるようです。しかし残念ですが、条件が厳しいので多くの場合、時効が成立する事はありません。

時効の成立には、滞納を始めた日から一度も請求が無かった期間が5年必要になります。

この期間、1度でも督促状などが届けば「時効の中断」が適用される事になります。時効の中断とはそれまで経過した時効期間を1度リセットし、催告や督促状などが届いた日から再度5年の時効を開始する事です。

これにより、ほぼ時効の成立は不可能と言えます。

滞納トラブル!たった2つの解決策を把握する

国民健康保険の滞納について、保険証の利用制限から利用不可の流れと差し押さえについてお話ししました。病気や事故など、医療費の必要な時は突発的に起こってしまいます。その為、国民健康保険の滞納は出来るだけ回避していかなくてはいけません。

  • ①市区町村の窓口で相談する

出来るだけ早急に相談する。これが鉄則となります。滞納した後よりも、滞納する前の方が自治体も出来るだけ親身に滞納を回避する為のアドバイスをしてくれると思います。

滞納トラブルについては、主に分納・免除・猶予と言う点について考えるとよいと思います。複数回に分け支払ったり、支払期日を伸ばして貰ったり、免除申請を出来る場合は役所の方と相談し行ってみるとよいと思います。

特に、失業中の無職状態、他の借金で苦しい状態、収入が安定しない(自営業者には良くある事です)、病気や入院など、特別な事情がある場合は市区町村は相談にのってくれます。

1人で悩み、滞納を放置してしまうのではなく解決に向かうべく行動する事がとても重要な訳です。

  • ②お金を用意する

実行できるかどうかは別ですが、滞納の問題は支払いが一番の解決策です。時効についてもご理解頂けたと思いますので、滞納分が消える事はありません。

いつか払わないといけない事を考慮すれば、滞納すればそれだけ負担が大きくなるので1回1回きちんと支払う事が最も重要だと感じて頂けると思います。

ただ、多くの方は支払いたくても支払うお金が無いと言う状態だと思います。役所への相談が、有効な手段となりますがそれ以外でお金を用意する事を考えてみるのも1つのです。親、業者などを、その時だけ頼る事も考慮してみても良いと思います。

当然、計画性が無いとただただ借金が増えてしまうので慎重に考えて行動して頂ければと思います。

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