滞納・未払い・差し押さえ

国民年金は払わないですむ?払わない方法とそのリスク

皆さんは、国民年金に対してどういったイメージをお持ちですか?

国民年金というと「将来ちゃんともらえるかどうかわからない」「ただでさえ生活が苦しいのに、保険料を払うのはキツい」など、不安や不満を持つ人も多いのではないかと思います。

実際、高齢化社会が進むと現役世代の国民年金の負担が増えてしまいます。支給開始年齢の引き上げや、将来受け取れる年金額が目減りしてしまうことも十分考えられます。

せっかく高い保険料を払ってきたのに、もらえる時期は遅くなるわ額は減らされるわ・・・となると、払いたくないと思うのはまあ当然ですよね。

このように何かと問題の多い国民年金ですが、はたして払わないですむ方法というのはあるのでしょうか?

ここでは国民年金を払わない方法とそのリスクについて解説していきます。

国民年金を払わない方法はある

そもそも、国民年金への加入は20歳以上の国民の義務であるため、どんなに払いたくなくても「払わない」という選択はできません。

ですが、合法的に国民年金を払わない方法は確かに存在します。

海外在住なら国民年金を払わないでOK

国民年金には「国内居住要件」というものがあり、年金の支払い義務があるのは「日本国内に居住している20歳以上60歳未満の人」とされています。

つまり、海外に移住した場合は「加入対象外」となり、国民年金を払わないですむことになります。

それでもやっぱり日本の年金を受け取りたい、という人のために、国は「任意加入」という制度を設けています。ただ、あくまでも任意ですので、加入する、しないは自由です。

ただ、移住先によってはその国の社会保障制度に強制的に加入しなければならない場合もあるので(アメリカ・カナダ・イギリス・ドイツ等)注意が必要です。

国民年金免除制度を利用すれば払わないですむ

国民年金には、失業したなどの理由で経済的に支払いが苦しい人のために、保険料の全額または一部が免除される免除制度があります。

国民年金の免除には、法定免除と申請免除、特例免除の3種類があります。

法定免除 障害基礎年金や生活保護の受給者
国民年金保険料の全額が免除
申請免除 経済的な理由で納付が困難であり、申請をして認められた人
全額、4分の3、半額、4分の1
前年所得などから免除となるかどうかを審査。本人の所得だけでなく世帯主や配偶者の所得も審査対象
特例免除 配偶者からの暴力(DV)を受けている人、災害の被災者、失業者など
配偶者からの暴力が理由で別居している場合は、配偶者の所得の高さに関係なく、本人の所得が一定以下なら全額、または一部免除
災害や失業などの理由によって免除となる場合は、前年所得が多くても所得に関わらず免除される

このうち国民年金の申請免除は、本人、世帯主、配偶者のそれぞれの所得が審査され、所得が下の表で計算した金額より少ない場合に免除されます。

4分の1免除158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

全額免除 (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
4分の3免除 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

全額免除の例で計算してみましょう。

・扶養する親族がいない場合…1×35万+22万=57万円
・扶養する親族が1人の場合…2×35万+22万=92万円

つまり、まったくのシングル世帯ならば所得57万円、養っている家族がいれば所得92万円がボーダーラインということになります。

ただ、とりあえず免除申請が通っても、一生払わないでいいというわけではないのです。国民年金の免除期間は、7月から翌年の6月まで。自動更新されることはないので、延長する場合は毎年申請をしなければなりません。

どうしても国民年金を払いたくなければ、収入を増やさないことですね。

【関連記事】

国民年金を払わないと実際はどうなるの?将来の不安

国民年金を自力で払わないけど払ったことなる第3号被保険者

国民年金には以下の3種類があります。

国民年金の種類
第1号被保険者・・・自営業、学生など
第2号被保険者・・・会社や役所に勤める厚生年金加入者
第3号被保険者・・・第2号被保険者に扶養される配偶者

このうち、第3号被保険者だけは他の2つと大きく違うところがあります。それは「保険料を自分で払わなくてよい」という点。

しかも第3号被保険者となっていた期間は、免除などと違って国民年金を完全に払っていたとみなされます。したがって将来の年金額も減りません。

第3号被保険者になるには、第2号被保険者さんと結婚して扶養家族になること。要するにサラリーマンと結婚して、自分は専業主婦(夫)になれば、自分で国民年金を払わないでいいというわけです。

ただ、自分が60歳になっていなくても、配偶者が65歳になれば第3号被保険者ではなくなります。以降は第1号被保険者として保険料を払わなくてはなりません。

少しでも長く第3号被保険者でいたいなら、年下のお相手を選びましょう。

国民年金を払わないとどうなる?リスクは大きい

ここまで、国民年金を払わないですむ3つの事例をご紹介してきました。「海外移住なんて無理だし、普通に働いて収入も得たい。でも年金は払いたくない!」という人もいるかもしれませんね。

まあ、払わないですむものなら払いたくないというのは当たり前のことですが・・・

それでは国民年金を払わないとどうなるのでしょうか。実はリスクだらけです。

国民年金は払わないともらえない

当然のことですが、国民年金保険料を払わないと受給もできません。

国民年金の満額受給額は、月額にして約6万5000円くらい。「少ない!」と思うかもしれませんが、高齢となってから、毎月少なくともこれだけの収入が保障されるというのはずいぶん心強いことではないでしょうか。

また、国民年金には65歳以上が対象の老齢年金だけでなく、障害者年金というものがあります。これは病気やケガなどによって障害のある状態になったときに、年金を受け取ることができる制度で、65歳になっていなくても受け取ることができます。

国民年金を払わないでいると、この障害者年金も受給できなくなってしまいます。

国民年金を払わないと差し押さえのリスクも

収入があるにもかかわらず、国民年金を払わない状態が続くと、国による強制徴収が行われ、最終的には預貯金の口座や、家などの財産が差し押さえになってしまいます。

国民年金は家族も連帯納付義務者となるため、本人に財産がない場合は代わりに配偶者や家族の財産が差し押さえられることになります。まわりの人たちにもすごい迷惑をかけてしまうのです。

自力で貯めるのは無理がある

国民年金を払うのが義務なのはわかるけれど・・・

「将来ちゃんと受け取れるかどうかわからない」
「満額でも月に6万5千円じゃ生活できないし、自分が受け取るころにはもっと減ってるかもしれないよね」
「それなら自分で貯めておいた方がいいんじゃないの?」
という声も聞こえてきそうです。

では、国民年金なしで老後生活を送るためにはどのくらいのお金を貯めればいいのでしょうか。

平成28年度の総務省の家計調査報告によると、60歳以上の夫婦世帯の平均支出は約26万8,000円、シングル世帯で約15万6,000円となっています。

これは日常の生活費としては最低限に近い水準だそうです。

つまり、1人でも月に最低15万円はかかるということ。

日本人の平均寿命が85歳として計算すると、60歳から85歳までの25年間、生活費だけで4500万円必要だということになります。

例えば30歳の人が60歳までに4500万円貯めようとすると、単純計算でなんと月に約12万円ずつ積み立てていかなければならないことに。

毎月これだけ貯金するのは正直言って大変すぎますよね。

一方で国民年金保険料は月に1万6千円程度。払わないで貯めるよりも、コツコツ払って、月に6万円の年金を受給したほうが効率的と言えるでしょう。

「生活保護受けるから国民年金払わない」は大間違い?

たまに「困ったら生活保護受けるつもりだから国民年金は払わないよ」などと言う人がいます。

生活保護の支給額は地域によって違いますが、例えば東京都都市部在住、60代シングル世帯で無収入の場合、生活扶助費はおよそ7万5千円。住宅扶助も合わせると月12万5千円くらいになります。

一方で国民年金は満額でも6万5千円。しかも生活保護なら税金も医療費も免除されるとなると、確かに年金を払うのがバカらしくなってしまうかもしれませんね。

しかし生活保護を受けた場合、メリットばかりではありません。

貯金ができない

生活保護受給中は、原則として貯金することができません。生活保護は生活をするのに必要な最低限の金額を計算して支給されているためです。

保護費のなかから貯金するのはもちろん、保護を受けながら仕事をしている場合、その収入を貯蓄に回す、ということもできません。

借金の返済ができない

生活保護費はあくまでも生きていくための生活費という考え方なので、借金があってもその返済に充てることはできないのです。自己破産でもしない限り、借金はそのまま残ります。

もちろん受給中はローンを組むこともできません。

車の所有も限られる

受給中は車や貴金属といった高額なものや、娯楽品などを購入することができません。もともと持っていた場合は売却を求められます。

ただ、車やパソコンなど、住む地域や仕事によってどうしても必要だと認められたものに限り所有することができます。

収入の申告義務

生活保護受給中は、毎月の収支を申告することが義務づけられます。まったく収入がなくても毎月申告しなければいけません。

収入があった場合は保護費返還の対象となります。臨時収入(保険金、示談金、相続財産など)はもちろん、競馬やパチンコなどのギャンブルで得た賞金は全額返還となります。

年金なら、どう使おうと本人の自由です。

年金を払わないで生活保護を受ける人が増えたら、増税や保護費が減額される恐れもあり、最終的に自分が困ることにもなりかねません。

国民年金「払わない」よりも」お得に払う」を選びたい

いかがでしたか?

それでもやっぱり国民年金払わないですか?

考え方は人それぞれですが、一番危ないのが、社会制度もよく知らないまま、巷で言われている「将来は国民年金なんてもらえなくなる」という噂だけをなんとなく信じ込んで、年金を払わないでいることです。

どうしても払えないというときは先に述べた免除制度もあります。

国民年金には前納制度があり、2年分前納なら保険料が約1万5千円安くなります。また、クレジットカード払いにすれば効率よくポイントを貯めることもできます。

国民年金「払わない」ではなく、お得に賢く払う工夫をしたいですね。

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