滞納・未払い・差し押さえ

住宅ローンで自己破産!3つの体験談から破産を理解する

生涯で最も大きな買い物がマイホームだと思います。ただ景気の影響や突発的な事故などで当初の予定が狂い、金額の大きさから簡単に住宅ローンを滞納してしまうケースが最近増えています。

そして、その滞納が原因で家を手放したり、自己破産といった結末を迎えてしまう方がいらっしゃいます。その場合、家を失い、財産を失い、信用を失ってしまう訳です。

自己破産は怖くもあり、また1つの救済処置です。しかし、怖さだけが1人歩きしているようにも見えます。そこで自己破産の体験談をもとに、住宅ローンで破産をするとどうなってしまうのか?また、破産後はどういった状況になるのかについてお話ししていきたいと思います。

住宅ローンの滞納で破産!家も借金も無くなってしまう

住宅ローンが原因で自己破産をする人は、意外に多いものです。自己破産をした方の調査結果から、全体の16%が「住宅ローン・住宅購入」と述べています。

※2014年破産事件及び個人再生事件記録調査にて確認が出来ます

自己破産した人の、6人に1人は住宅ローンが原因で破産したと考えている訳です。では、意外に身近なこの自己破産とは一体どんな物でどのようなデメリットがあるのか、基本的な部分からお話ししていきたいと思います。

破産は救済処置!住宅ローンを全額免除できる2つの手続き

自己破産とは、個人が持っている債務(借金)を全て免除する事が出来る裁判所の処置の事を指します。自己破産は、2つの手続きから成り立っています。

①個人が持っている財産を換価(現金化)して、債権者へ充当する
②充当しても残った債務を免除する

この①換価②免責の2つの手続きを持って、自己破産と言います。個人が持っている財産とは、自己所有の家であったり、車であったり、貴金属や不動産であったり様々です。現金化しそれでも負債が残ってしまえば免除と言う流れになる訳です。

※通常、住宅ローンの支払いが完了していれば自己破産時に換価される財産対象ですが、支払いが終わっていなければ抵当権がついていますので銀行等(金融機関)に住宅は押さえられ財産対象となりません。

つまり自己破産すると、裁判所に押さえられるか銀行等に押さえられるかの違いはありますが、結局「家を失う」と言う事になります。

それでも、一般的に自己破産にまで追い詰められた方にとって、住宅ローンの債務が免除になるのは精神的にも経済的にも助かる訳です。また自己破産は本来、個人の再建を念頭に置いた救済処置です。

その為、99万円以下の現金と20万以下の財産、減価償却などが終わった車などは処分対象の財産とされず手元に残す事ができます。自己破産というとあまり良いイメージは無いですが、実は再出発を支援する行政処置という訳です。

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破産の悪影響!6つのデメリットと4つの誤解

住宅ローンの滞納が長引き、破産という手段を選択した場合、当然ですがデメリットがあります。また、自己破産に対して少し誤解があるようなのでその点について指摘しておきたいと思います。

<デメリット>
①家族、連帯保証人へ迷惑が掛かる
②財産の没収
③生命保険などの解約
④信用情報機関へ破産情報が登録される
⑤官報に載る
⑥一定の期間、就いている職業に影響

自己破産をしても、借金が免除されるのは本人のみです。住宅ローンを申し込む際、連帯保証人(妻・親など)を一緒に登録していると思いますがそちらに請求が行きます。

また、残債務を連帯保証人も支払えない場合は、連帯保証人も債務整理する必要が出る可能性がありますので注意が必要です。

めぼしい財産は全て無くなり、生命保険などは解約されてしまいます。信用情報機関に破産の情報が載り、新規の金融商品(クレジットカードやカードローンなど)の審査が大変厳しくなります。また、官報(政府刊行物)に破産情報が載ります。

以下の職業についている方は、自己破産によって影響があります。その場合は、勤務先に申告する必要が出てきます。

  • 弁護士
  • 税理士
  • 公認会計士
  • 行政書士
  • 宅地建物取引主任者
  • 会社の取締役及び監査役
  • 司法書士
  • 商工会議所会員
  • 警備員

※資格を必要としない会社員などの場合は、影響はありません

<誤解>
①一般的に周知は無い
②選挙権はある
③賃貸物件は借りられる
④海外旅行へは行ける

通常、住民票などに破産情報が載る訳ではないので、周りにバレる事は口外しない限り無いと思います。また、自己破産しても選挙権は無くなりません。20歳以上の日本国民の権利など行使して下さい。

信用情報に傷がつくので、家を借りられないと思う方もいるようですが問題ありません。ただ、保証会社を通じて家を借りる場合、審査に落ちる可能性が出てきますのでその点は注意が必要です。

海外旅行も大丈夫です。但し、破産手続き中は許可が必要であり、多くの場合却下される傾向にあるので手続き期間中は海外旅行が難しいかもしれません。

破産は最後の手段!事前に流れを知り緊急時に備えておく

住宅ローンの支払いが厳しくなり、ついには破産してしまった。そんな状況になった場合、一体どのような事が起こるのでしょうか?また、実際にどのような流れで自己破産とは行われるのでしょうか?

住宅ローンの滞納から破産を経験した体験談をもとに、一般的な自己破産の手続きについてお話ししていきたいと思います。

想定外!給与が減って住宅ローンが払えなくなった体験談

<体験談:1>
当時、毎月の住宅ローンの支払いは12万円で、給料の手取りは40万円程ありました。余裕とまではいきませんが、問題は無いと思っていました。ただ当初予定していた計画より、子供に掛かる費用や親に掛かる入院代などが重なり、実際は数年の支払いでかなり厳しさを感じていました。さらに給料が減り、残業をこなして少しでも給与を確保しようとしていた時、倒れてしまいました。そのまま入院して、治療費の事が重く圧し掛かってきた時、今後の事を考え妻と相談して泣く泣く家を手放す事にしました。最初は自己破産なんて考えていませんでした。色々調べるうちに、任意売却をする事が良いように思えたので数社に相談を持ちかけそのうちの1社と契約する事にしました。契約会社から最大で1年間、住宅ローンを払わず家に住み続けて良いと言われたので、その間に引っ越し費用を貯め準備していました。引っ越し先は、契約した会社が探してくれたので大変助かりました。ただ想定外の事が起こりました。相場近くで売れると思っていたのにかなり低く売却されてしまった為、清算後も残債が400万円程残ってしまったのです。お恥ずかしい話、生活の足しに消費者金融などで借入をしていたので、ここでギブアップしました。弁護士に相談すると自己破産した方が良いと言われ、素直に従いました。数カ月の手続き期間を経て、無事終わった時は本当にホッとしました。あそこで、無理に返済を続けていたらどうなっていたのか考えるだけで怖くなります。住宅ローンの滞納でマイホームは手放しましたが、破産という手続きで何とか再出発する事が出来た、救われた、と今では思っています。

借金の免除!一般的な自己破産の流が分かる9ステップ

実際に、自己破産をするには弁護士などの専門家に頼るのが一番です。費用は掛かりますが、破産手続きは面倒なので、大変な時期に少しでも精神的負荷を緩和させるためにも専門家を頼った方が良いと思います。

そこで弁護士を使った場合の、流れをお話ししていきたいと思います。

◆①弁護士に依頼

◆②受任通知の発送と債権調査

◆③破産申立

◆④破産審尋

◆⑤管財人と打ち合わせ

◆⑥破産手続き開始

◆⑦免責審尋

◆⑧免責許可の決定

◆⑨免責の確定

9ステップが完了するのに、およそ6~8カ月程掛かります。

①の段階で相談し、色々聞いたうえで契約に至ります。そして②の段階で債権者へ通知を行い、個人がしている債務の取引履歴を回収し、現存の債務の全額を把握します。この手続きまででおよそ4カ月程掛かります。

③の段階で書類を揃え裁判所に破産を申立て④の段階で裁判官と弁護士が面談します。③④で1カ月程の期間が掛かります。⑤の段階で、本人の出席が必要となり弁護士と破産管財人とスケジュール調整をします。

⑥の段階で手続きが開始され、⑦の段階で債権者を集めた意見聴取が行われます。これに本人の出席が義務付けられています。ただ、債権者の方はほとんど欠席する傾向にあります。破産手続き開始から意見聴取までは約2カ月程掛かります。

⑧の段階で、正式に裁判所から免責の決定文を貰います。そして1カ月程経過すると、⑨の段階となり免責が決定し破産手続きは終了となります。

※この9ステップは、財産がある場合の流れです。財産が無いと判断できれば、もっと早く終わります。

自己破産は、かなり判断に迷う選択だと思います。その為、まず自己破産の前に住宅ローンで厳しくなったら銀行等(借入している金融会社)にまずは相談して下さい。

  • 支払額の見直し

とても単純な事ですが、現状の支払いを分割にしたり延期したり見直し立て直せるか検討する事も大切だと思います。些細な事ですが、全てを行ってダメなら最後の手段として自己破産を検討して下さい。

免除できない借金!破産できない人!自己破産をより理解する

自己破産は申立てれば、全てを免除される訳ではありません。場合によっては、免除されなかったり、そもそも自己破産が認められない事もあります。

自己破産について、体験談からより深く理解してみて下さい。

自己破産は万能ではない!免除できない借金に焦った体験談

<体験談:2>
住宅ローンの滞納が始まったのは、ちょうどギャンブルにハマった頃からでした。それまでの支払い自体は問題なかったんですが、仕事が上手くいかなかった事もあり気晴らしに始めたギャンブルに逃げる形でハマってしまいました。最初は生活費を削っていて何とかなったんですが、気付けば銀行のカードローン3社に手を出すほどギャンブルに注ぎ込み、その支払いに加え、車のローン、そして住宅ローンの合計で月20万の支払いにまで膨らんでいました。当初は、親にムリ言って用立てて貰っていましたが、最終的に滞納が3カ月になった段階で内容証明が届き「もうダメだ」と妻と相談し家を手放す事にしました。しかし、いくら家を手放しても住宅ローンの債務は残り、さらにカードローンや車のローンの事も考えるともう自己破産しかないのではないかと思うようになりました。そこで、弁護士さんに相談したところ、まずは任意売却をして自己破産という流れが良いと勧められました。そうする事で、支払わなくても良い猶予期間とその期間家に住み続ける事の許可が貰えた事により、心に余裕ができ自己破産への準備をする事が出来ました。無事、任意売却が済み、住宅ローンの残金は残りましたが、カードローンなどの債務と一緒に自己破産手続きに移りましたが、ここで問題が出てきました。実は、破産審尋のとき裁判所の職員の方と話していると、ギャンブルで作った借金についてかなり難色を示されたのです。これは免責不許可事由と言うらしいのですが、そのせいで住宅ローンはOKでもギャンブル分はダメという流れになってしまいました。ただ、これは事前に弁護士さんから指摘されていたので、きっぱりギャンブルは止めている事や最近の支払い状況など伝え、そして健全な生活を営んでいる事を伝えました。その甲斐あって、無事に免責許可がおり全ての借金を免除する事が出来ました。弁護士費用は40万円ほど掛かりましたが、本当に助かりました。

住宅ローンは免除できる!しかし破産しても残る借金がある

自己破産には、免責不許可事由という、借金の免除に不適切だと言うものがあります。

  • パチンコ・競馬などギャンブルで作った債務
  • 換金行為(クレジットなどで商品購入後、転売する行為)
  • 名義貸し(借金の必要が無いのに、カードを作り他人に使わせるなど)
  • 資産を隠していたなどの、悪質な行為があった場合
  • 7年以内に自己破産している場合

自己破産は、裁判所にて裁判職員の判断で行われます。

故に、借金を免除し再出発をするに値する人物なのか見極める為、正当な理由でない借金については免除する事を不許可にする訳です。

ただ、自己破産は救済処置です。借金の理由が免責不許可事由だとしても、今後を見据えて真剣に生きる事を訴える事で免責を許可される流れになります。

これを、裁量免責と言います。この辺りも専門家を交えて相談した方が、より自己破産が上手くいくコツだと言えると思います。

※税金や養育費や慰謝料、不法行為による損害賠償などは絶対に免責が認められない「非免責債務」なので注意が必要です。

「ウチも破産を考えています!」破産の条件を理解する

一昨年、30年の住宅ローンを組みました。月々9万円で、ボーナス15万、年収は450万ちょっとです。ただ、今さらですが、金利が上昇したり、子供の事を考えたり、両親や義両親の事を考えるとローンの支払いに不安が出てきました。最悪の場合、自己破産をした方が良いでしょうか?

これは、もの凄く卑屈な質問なのかもしれません。しかし、上の体験談からも分かるように住宅ローンの負担は家計に大きな影響を及ぼします。その為、自己破産のような極端な結論を考慮してしまうのかもしれません。

ただ、実際このケースにおいて判断すると、まず自己破産する事は不可能だと言えます。この方の場合、年収450万円に対して年間の住宅ローン額が140万円ほどになりますが、一般的な支払い率なので「切り詰めながら、頑張って返済して下さい」となると思います。

この住宅ローンの他にも債務が重なり、年間で200~250万円ほどになって来るとさすがに日常生活にかなりの影響が出ると思います。

これは裁判所も、「支払い不能」であると判断するレベルです。自己破産は、最後の救済処置です。但し、あくまでも最終手段なので、よほどの困窮でない限り条件を満たしていないと判断されてしまう事を覚えておく必要があります。

破産したら家はもう持てないの?住宅ローンを再度組む方法

1度でも自己破産したら、もう住宅ローンの審査は通らないの?と思う方がいるかもしれません。しかし、大丈夫です。破産は救済処置です。再出発をされた方が、将来困らないようになっています。

但し、いくつかの条件をクリアしなければ、マイホームを持つ事は難しいかもしれません。自己破産をした方が、その後、住宅ローンなどを組む事が出来るのかについて体験談を通じお話ししていきます。

自己破産しても大丈夫!2度目の住宅ローンを組んだ体験談

<体験談:3>
社会人3年目の時、親に連帯保証人になって貰って住宅ローンで1500万のマンションを購入しました。ただ、あまり考えなしの行動だったみたいで、給料が生活費や支払いに右から左で消える状態で貯金など一切出来ませんでした。そこへ会社の業績不振から給与が減って、さらに倒産。妻の病気も重なり、返済どころか生きる事だけでも精いっぱいとなり、困り果て自己破産をしました。債務はある程度残りましたが、それは親が支払ってくれました。本当に当時は迷惑を掛けましたその後、再就職しある程度の貯金と給料が貰えていたので、40代でもう一度、家の購入を考えました。ただ、自己破産をした自分が住宅ローンを受けられるのか心配で仕方がなかったです。審査を受ける時は、本当に生きた心地がしませんでした。しかし、意外にも審査は問題なく通り、住宅ローンを受ける事が出来ました。結果、家を購入する事ができ、今のままなら完済までの目途も付きました。あの頃があったからこそ、今があると思っています。

10年、待つ!破産後に住宅ローンを組む為の3つの条件

一度自己破産をした場合、もう二度と住宅ローンなどの金融商品は審査が通らない思う方がいるようですが問題はありません。

自己破産は、破産法252条によって7年間の借入不可期間がありますが、それ以降なら問題なく審査を受け通れば住宅ローンを借りる事が可能となっています。

ただ、7年待てば住宅ローンが組めるかというと、それも難しい問題です。一度、自己破産をした方が住宅ローンを再度受けるのなら、最低3つの条件をクリアする必要があります。

●1.10年、待つ
●2.クレジットヒストリーを蓄積する
●3.頭金を増やす

まず、破産法で7年の縛りがありますが、基本的には10年だと考えた方が良いと思います。一般的に住宅ローンは銀行からの融資を考慮すると思いますが、銀行は全国銀行協会(JBA)に加盟しています。

JBAは、破産情報を10年保持しています。その為、7年経過し借りる事が法で認められても、実際の審査ではかなり厳しい結果にならざるを得ない訳です。銀行以外(JBA加盟企業以外)の融資先を見つければ7年でも問題ないかもしれませんが、かなり難しいと思います。

クレジットヒストリーとは、クレジットカードや金融ローン(車や携帯の割賦支払いなど)の履歴の事です。住宅ローンを受ける際、クレジットヒストリーがないとほぼ審査に落ちる傾向にあります。

これは今の時代、クレジットヒストリーを持っていない方の方が珍しいからです。再度、住宅ローンに挑戦する前に、クレジットカードやカードローンを利用し、クレジットヒストリーを敢えて作っておく作業が必要となります。

但し注意点として、滞納には気を付けて下さい。新しく作ったクレジットカードやカードローンの債務履歴も、銀行側は審査の対象とします。

最後は、住宅ローンを組む際、できるだけ頭金を多くする事です。払えるだけ払い、住宅ローンを低くできれば審査に通過しやすくなります。

以上、最低3つを出来るだけ意識して実行すれば、かなりの確率で住宅ローンを借りる事が出来ると思います。もし、それでも不安の場合は、一度専門家に相談すると良いアドバイスが貰えると思います。

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