滞納・未払い・差し押さえ

借金が返せないと強制執行?その概要と回収される資産を簡単に解説!

強制執行という言葉は、あまり私たちの生活になじみのない言葉です。しかし、他人事ではなく、お金を借りた人は誰であっても当事者になる可能性がある言葉でもあります。

今回は、強制執行という制度について解説していきます。どんな制度なのか、どんな財産が対象になるのかといったことを知っておきましょう。

強制執行って何?借金を返せないと起こることとは

私たちが第三者からお金を借りたり、債務を負った場合、返済義務が発生します。債務には大抵の場合、返済期限が定められており、決められた期限までに債務を解消しないと、延滞行為とみなされます。

債務者(お金などを借りている側)が返済しないと、債権者(お金を貸している側)は、本来返ってくるはずのお金が返ってこないので不利益を被ることになります。

債権者は、返ってこない債権を回収するために、強制執行という制度を利用することが出来ます。もちろん、本来ならば、債権者自身が、債務者に直接債務を返済することを促して回収できればそれに越したことはないのですが、相手が催促を無視したり、資金が無いという理由で返済を拒んだりしてトラブルになることも少なくありません。

強制執行とは、こうしたトラブルを裁判所の力を借りて解消するために制度であり、「強制的に債務者の保有する財産を差し押さえ売却し、その利益を債務に充当する行為」のことです。

つまり、借金を返せないと強制執行を発動され、自分が持っている財産を法律のもと、合法的に勝手に売却される可能性があるということなのです。

強制執行になったら抵抗できない極めて拘束力の高い制度!

例えば、強制執行になり、特定の財産を処分するという話になったとします。しかしそれが自分にとって非常に重要な財産だという時に、売却されるのを拒否することは出来るのでしょうか。

これは原則的にできません。出来るのは、その財産を処分しない代わりに他の財産で代用できるときのみです。要は、「その財産を売らない代わりで別の財産を処分しろ」となった時に処分できる別の財産があるときだけ売却を拒むことが出来ます。

この問題でよくあるのが、自動車の売却や住宅の売却になった時です。しかし、この二つが差し押さえ対象になったということは、債務額が非常に大きいケースが多く、大抵は代替財産が無い場合です。つまり、これらが差し押さえ対象になった時には、それらは高確率で手放さなくてはいけなくなっているわけです。

その時になって売りたくないとゴネても認められません。強制執行は極めて強制力の強い制度です。さらに逃げることもできません。執行するのは裁判所を中心とした国の組織です。もはや債権者と債務者の2者のやり取りではなく、国が介入するため、執行を恐れて引っ越ししようと勤務先を変えようと逃げ切ることは出来ません。

強制執行できるのはどんな時?誰でも使える制度なのか

強制執行は極めて強力な制度です。そのため、利用者の乱用や悪用を防ぐために、利用するために必要な手順や用意するもの(書類)があります。

「借金が返してもらえないから強制執行を依頼しよう」というように、簡単に実行出来る制度ではないということを必ず覚えておく必要もあります

この制度を利用するために最低限準備することと手順があります。大きく分けて2つ、債務名義関連の書類の準備と差し押さえ予定の財産の価値調査です。

債務名義とは、簡単に言えば「強制執行をしても良いという許可証」のようなもので、法的に言えば、「強制執行可能な効力を持つ公文書」です。

債務を強制執行するということは、債務書の財産を強制的に売却することになります。当然、相手は余程のことが無い限り反発します。「勝手に俺の~を売りやがって」とこうなるわけです。

この反発をねじ伏せるために、債権者は裁判所に対して、「執行文付与」という依頼をします。これは言うなれば、裁判所に後ろ盾になってもらい、「この強制執行は法律に基づいた正当な行為である」ということを債務者に知らしめるわけです。

かなりかみ砕いて述べましたが、正確には、執行文とは裁判所書記官が債務が執行可能であるということを証明するために作成する文章のことです。この役割は、債務名義の事実を証明し、強制執行の正当性を高めることにあります。

債務者は、この書類に対して、不服を申し立てることが出来ます。強制執行が不当である、つまり自分の債務は強制執行をされるほどの物ではないと主張することが出来ます。これを「執行文付与に対する異議」と言います。

これらが済んだ後、債務名義の送達証明申請をします。これによって、債務者側は債権者側が強制執行の準備をしているということが分かり、処分されたくない財産などを移転・管理し、または処分しても良い財産を提供したりというように、強制執行に対して対応を取ることになります。

強制執行が出来る財産を調査する過程

いざ強制執行によって債務の返済をさせようとしても、相手がどんな財産を持っているのか不明では片手落ちです。債権を回収するためには、相手の財産がどの程度あり、どれを処分すればいくらになるのかといったことを事前に調べる必要があります。

相手が個人であれば、自宅や所有する車の資産価値、銀行の口座残高、勤務先の情報と給与額、保有している有価証券の総額、その他処分可能な貴金属や物品の価値の調査が必要です。企業が債務者の場合、売掛金の額、有価証券、在庫の評価額、処分可能な不動産価値、取引している銀行などを調査することが求められます。

こうして、相手の財産状況を把握したうえで取り立てをしないと、いざ強制執行したら相手はほとんど財産を持っていなかったといった事態になってしまいます。実際には裁判所が厳密に確認するため、そういったことはほとんど起きませんが、基本的に財産の調査は、強制執行の前に債権者裁判所と共同ですべき内容です。

また、不動産および動産の強制執行には「裁判所費用」というものが発生します。これは何かと言うと、強制執行によって債務者の財産を処分するのは裁判所の行動です。そのため、裁判所のその手間賃を「債権者」に請求してきます。

動産の強制執行時には約5万円、不動産の執行時には、なんと50万円以上もかかります。不動産執行では、対象物の価値の算出や、その後の売却にかかる手間や期間が膨大であるため、費用(予納金)が非常に高くなるのです。

何が言いたいかと言うと、これだけ費用をかけて強制執行するのだから、ちんけなものを処分しただけでは足りないということです。強制執行によって売却するものの価値と、それによって裁判所に対して発生する費用の関係を調べることを「費用対効果の調査」と言い、このバランスが取れないと、強制執行自体が無意味になってしまいます。

強制執行にはどんな種類があるの?回収される資産概要

強制執行によって回収できる財産には、債権、動産、不動産の3種類があります。

個人間での強制執行で最も多く取り挙げられるのは、動産執行であり、3種類のうち、金額が最も少ない場合によくおこなわれます。

動産執行のメリットは、資金回収が迅速に済むという点と、予納金の負担が小さく、債務者の財産の把握が容易であるということです。有価証券など売却に手間がかからないものが多いのですが、場合によっては自動車や、骨董、嗜好品なども含まれるため、こうしたものでは売却に時間がかかることもあります。

債権執行は、企業間での強制執行で最もよく見られる方式です。売掛金債権と貸付金債権が強制執行の対象になりやすく、個人の有価証券もこの債権執行の範囲に属します。

債権執行のメリットは、予納金が少ない割に回収できる資金が多く、費用対効果に優れていることです。また、動産執行に比べて回収するものの種類も少なく、手続きが煩雑化・長期化しにくいという利点もあります。

不動産を差し押さえるのは大変?債権者のすり合わせ

強制執行の中でも最も規模が大きく、最も大掛かりになるのが不動産執行です。これは他二つの債権執行と動産執行とは大きく異なり、債権回収までかなりの時間と手間がかかります。おまけに、予納金が大きく、きちんと順序立てて事を成さないと費用が回収できずにえらいことになります。

不動産執行をする際に一番気を付けなくてはならないのが、他の債権者との兼ね合い、つまり、回収する不動産が既に他の債権者の担保になっているケースです。

これを調べたうえで、債務者が所有しており、しかもほかのどの債権者の担保額よりも土地の価値を高く付けることが出来なければ、不動産執行が行えません。要は、それ以上高く価値を付けてくれている(担保にしている)相手がいるのに、わざわざ安く買い取る相手に土地は売らないということです。

不動産執行を行う場合、まず債務者の所有している不動産を調べ、登記を確認し、担保の有無を調べ、土地を評価し、差し押さえ、競売などで売却し、裁判所に予納金を支払い、これらの過程を経てようやく資金回収が出来ます。特に時間がかかるのが、土地の評価から競売完了までで1年以上かかることも珍しくありません。

しかし、その回収力は圧倒的で企業の所有する広大な不動産を回収する場合、数千万円以上にもなるので、大規模な債務執行では不可欠の手段でもあるのです。

回収されない物もある?差し押さえが禁止の財産とは

最後に、強制執行で回収できない財産について解説していきます。

債務者の最低限の生活を妨げる物品、または一定割合以上の給料は強制執行では回収することが出来ません。

差し押さえと同じで、ある物を取り上げてしまうと生活が著しく困難になると思われるものは、回収できないのです。例えば、冷蔵庫やテレビなど各種生活家電製品、ベッドやタンスといった家具及び寝具、食料品や薬などの日用雑貨品、こうした物を差し押さえで没収することは出来ません。

また、給料は4分の1までしか差し押さえが出来ません。これも、債務者の生活を保護するためです。たとえどんなに債務額が大きかったとしても、限界を超えて資金を回収することは出来ないように定められています。

逆に言えば、こうした最低限の生活を営むうえで必要と判断されたもの以外は、すべからく債務執行の対象です。

もし強制執行される予定があるのであれば、失いたくない嗜好品類は、名義を変えて誰かに預けたり、強制執行によって奪われないように守る必要があるのです。

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