国民年金の納付が免除される条件とは。滞納が不安なら相談を
国民年金の納付は、日本に住んでいる限り免れられないことですよね。将来的に貰えるお金だとしても、毎月支払い義務が発生すると生活が圧迫されてしまいます。しかし納付が難しい場合は、免除を受けられる可能性があります。
やむを得ず支払えない状況になってしまったが、「対応が面倒で滞納を続けている」や「どういった手続きをすればいいかわからないので放置している」といったケースも少なくありません。
当記事ではそんなお悩みを解決すべく、納付が免除される条件や手続き方法などをわかり易く説明していきます。「義務化されていること」を放置するのは、良くないことなので絶対にやめておきましょう。
知っておきたい国民年金の基礎知識!納付義務と受給条件
日本の誰もが当たり前のように納付している国民年金ですが、年間の支払い額や将来受給されるであろう金額を把握している方は少ないでしょう。免除になる条件を覚える前に、納付の義務や受給の条件などを確認しましょう。
納付の義務は20歳から60歳まで!年金にも様々な種類がある
国民年金の納付義務は「40年間」も続き、これを月にすると「480ヶ月」です。
私達日本国民は、国に対して実に480回払いもの義務を背負っているのです。ざっくり「年金」と聞くと、多くの方がイメージするのが「老後に貰えるお金」でしょう。日常生活で言われている「年金」は、正確には「老齢年金」というものなのです。
「老齢年金」以外にも「障害年金」や「遺族年金」などがあり、私達の生活に対して「もしものための保険」のような役割も果たしています。
健康でバリバリ稼げる人々で「日本中の人々」を支えるために、なくてはならない制度であることを覚えておいてください。
年金を受け取るための最低条件!保険料の推移と受給額
老齢年金を受け取るためには、最低でも「10年間」納付をしている必要があります。しかし2017年7月までは、必要期間が「25年間」でした。これはかなりの短縮ですが
納付する義務が無くなるわけではないですし、「10年間」だけだと受給額も非常に少ない状態です。
受給資格の必要期間が短縮された一方で、国民年金の保険料(月々の納付金額)は徐々に引き上げられている傾向にあります。
年度(5年毎) | 月々の納付金額 |
---|---|
平成10年度 | 13,300 |
平成15年度 | 13,300 |
平成20年度 | 14,410 |
平成25年度 | 15,040 |
平成30年度 | 16,340 |
上記の表は、各年の4月~翌年3月までの納付金額です。
年金制度は年度毎に見直しが行われ、保険料と受給額は変わっていきます。これを「物価スライド」といいます。
一番気になる「老齢基礎年金」の受給額ですが、平成30年4月分からは年間「779,300(満額の場合)」です。
受給額は平成20年と比べると、年間「13,000」程減少しています。確かに受給額も減少傾向にありますが、それ以上に納付する金額の引き上げが行われているのが現状です。
経済的に難しい時はすぐに相談!納付免除の条件とは?
では実際に、納付の免除が受けられる方の条件を確認していきましょう。免除を受けるためには、必ず申請が必要となります。払えないからといって放置していると、最悪の場合財産の差し押さえが執行されてしまう可能性もあります。
減額もあるの?国民年金の納付免除と免除額
一言に免除といっても4つの免除があります。
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
たとえ免除を受けていたとしても、受給資格期間はカウントされていきます。もし「全額免除を10年間」受け続けた場合でも、年金を受給できる資格を得られるということです。
しかし免除されていた金額や期間に応じて総支給額は減少します。
次に免除が受けられる条件を確認します、前年の所得を基に免除額が定められています。
免除額 | 所得基準(前年) |
---|---|
全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 |
4分の3免除 | 78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
半額免除 | 118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
4分の1免除 | 158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 |
扶養親族等控除額・社会保険料控除額等については、源泉徴収票・確定申告控等で確認することができます。
「免除」と聞くと、「全額払わない」と捉えがちです。実際は所得に応じて「減額の意味合いを持つ免除」も受けることができるので、対象となる所得の範囲を確認しておいてください。
面倒なこと程価値がある!?免除の申請に必要な知識
国民年金納付の免除申請には、必ず「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」という書類が必要となります。この書類に必要事項を記入し、住所登録先役所(役場)の国民年金担当窓口へ提出(郵送でも可)します。
申請書自体は、各所担当窓口に備え付けてあります。また「日本年金機構」のホームページより、該当書類の作成及び印刷・ダウンロードといった方法もあります。
納付の猶予とは!?免除以外の対処法と受給額
国民年金の制度には、納付の免除以外に「納付猶予」もあります。これはその名のとおり、支払いを待ってもらう制度です。免除を受けた場合、将来的に受給できる金額が減ってしまいます。猶予の場合は後々納付するので、最終的には満額に近い金額を受給できます。
猶予もほとんど同じ!?納付しないと受給額には未反映
納付猶予の申請方法についても、前述の「免除の申請」と同じです。こちらも前年の所得が基準となっており、以下の金額に設定されています。
・(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
納付猶予の基準金額は、「全額免除」の基準と同じになっています。
猶予期間中も「受給資格期間」のカウントは受けられますが、受給される年金額に反映されない点に注意が必要です。あくまで「猶予」なので最終的には納付する必要がありますが、もし納付しなかった場合「免除」と比べると受給額が減少してしまいます。
気になる受給額は!?免除・猶予による減額はどの程度か
ここまで納付の免除や猶予について説明しましたが、老齢基礎年金の金額にどのような影響を及ぼすのでしょうか?確認してみましょう。
免除額または猶予 | 支給金額(満額に対する割合) |
---|---|
全額免除 | 2分の1(50%) |
4分の3免除 | 8分の5(62.5%) |
半額免除 | 8分の6(75%) |
4分の1免除 | 8分の7(87.5%) |
納付猶予 | 0%(支払えば100%) |
全額免除されていても、満額の50%を受け取ることができるため大きく損はしない仕組みです。むしろ払っていないのに受け取れるのは、良心的な制度でもあると思います。
もちろん40年間の内に対する割合なので、今まで納付してきた金額が無駄になるということはありません。
例として、30年間満額納付+10年間全額免除の場合
平成30年4月~ 満額の場合779,300
(30+10×50%)÷40×779,300≒681,888
上記の場合、年間の受給額は約681,888となります。
もし10年間未納のまま放置していた場合と比べると、年間約9万7千円もの差が出てきます。日本人の平均寿命は、現在約83歳とされています。65歳から老齢年金を受け取った場合「18年間」受け取れるため、生涯で約175万円もの違いがあります。
このことから国民年金保険料を支払えない場合は、「必ず相談すべき」であるということがご理解いただけるかと思います。
納付を免除されていても満額!?追納や満額以上もらう方法
ここまでは納付しない、または減額する方法や影響をお伝えしました。では後々経済状況に余裕が出てきた場合に、免除され受給額が減ってしまった部分を取り返す方法はあるのでしょうか?
申請すれば後払いもできる!ついでに税金対策にもなる追納
国民年金の制度では、納付の免除を受けていた期間を「最大10年」まで遡って後払い(追納)することができます。もちろん追納することで、より満額に近い金額を将来受給することが可能となっています。
また追納した場合所得税や住民税の計算から控除されるので、余裕があるなら積極的に行うべきことなのです。
申請場所は免除・納付猶予と同じく「国民年金担当窓口」で、厚生労働大臣の承認を受けた後に「納付書」を受け取ることができます。
国民年金にも満額以上もらえる制度あり!?付加年金とは
「年金」の中には投資性のあるものもあり、代表的なものでいえば「確定拠出型年金」や「企業年金」などがあげられます。
しかし日本年金機構の、「老齢基礎年金」自体に上乗せすることも可能なのです。それが「付加年金」という制度です。これは月額400円を追加で納付した場合、付加保険料納付月数に応じて毎年の年金額に上乗せされます。
付加年金の金額は 200円×付加保険料納付月数 となり、2年間年金を受け取れば元が取れる制度となっています。
この金額は「物価スライド」の影響を受けることなく、定額なので将来的にも安心です。
年金額をリスクなしで少しでも増やしたい!といった方に特にオススメの制度なので、余裕があれば付加年金の受け取りも視野に入れましょう。
さいごにまとめ!
国民年金の納付免除の条件や影響、その他の納付猶予や追納といった内容をまとめます!
- 免除を受ける条件は所得にある
- 全額免除以外にも減額となる免除もある
- 免除額に応じて受給額は下がるが、最低でも半分は受け取れる
- 追納や60歳~65歳までの任意での納付などで満額にできる
- 未納のままの放置は絶対NG!最悪差し押さえまでありえる
保険料の支払い義務は、年を取るまでついてまわるものです。「面倒だ」「厄介だ」などと考えずにしっかりと向き合うことで、将来的には恩恵を受けられるものなのです。
年々保険料が上昇傾向である一方で、免除などの救済措置も変わってきています。未納のまま放置し続けている方は、一度お住まいの役所に相談してみてはいかがでしょうか?
(当記事は2018年6月現在の情報に基づくものです)
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