滞納・未払い・差し押さえ

口座差し押さえとは?意外と知られていない事実と滞納者の問題点

税金の納付や借金の返済を滞納すると、税務署や債権者は催促をしたのち、差し押さえを実行してきます。差し押さえには、いくつかの種類がありますが、今回は、その中でも一般的な方法である、口座差し押さえについて解説していきます。

口座差し押さえとはどのようなものか、差し押さえを受けた口座の今後の扱い等を知っておきましょう。

口座差し押さえってそもそもどんなもの?金融の基礎知識

口座を差し押さえられると聞いても、差し押さえ自体されたことが無い人にとっては、「何それ?」というレベルの話です。そもそも、差し押さえという行為がどういったものかを理解していないと、口座差し押さえの意味のよく分からないと思います。

差し押さえとは、債務または税金の滞納者に対して、行政が出す命令のことで、債務者(借金をしている人)の財産を債務者の同意なしに強制的に没収し、債務・税金の滞納解消に充てることが出来る制度のことです。

つまり、借金などを返さずに長期間放置すると、差し押さえ命令が出た時に、自分の財産が勝手に処分されてその返済に使われてしまうということなのです。これが、大まかに言った差し押さえの概要です。

差し押さえ命令(強制執行命令とも言う)が出る前には、必ず債務者に対して「差し押さえ通知書」というものが書簡で送られます。この内容は、「~月~日までに借金を返済しないとあなたの財産を差し押さえますよ」という、最後通告です。

この期間内に返済または納付を行えば、差し押さえは実行されませんが、これを過ぎてしまい、一度でも命令が出てしまうと、差し押さえの中止は出来なくなります。

この制度は、国や債権者(お金を貸している人)の権利を守るためにあります。つまり、いくら返済を催促しても返してくれない人に対して、「じゃあ、あなたの財産を処分してから無理やり払ってもらう」ということを国家権力のもと実行するのです。

口座差し押さえとは、滞納者の銀行口座から必要な分だけ強制的に債務の返済に充てる差し押さえです。例えば、預金額が100万円あり、滞納額が70万円であれば、滞納者の意思を無視して口座から支払いをさせ、70万円全額を返済させることが出来るのです。

口座差し押さえ以外で差し押さえられる物ってどんなものがあるの?

例えば、差し押さえられる人が本当に余分なお金を持っていない人だったらどうなるかという疑問もあるでしょう。銀行に貯金が一切ない相手に口座差し押さえをしたところで、払えるものなどありません。

差し押さえするためにには、前提として、その相手が財産を保有していることが必要です。一文無しからそれ以上金を取れないように、滞納者が本当に財産を全く持っていなければ差し押さえが出来ないのが事実です。

では、口座差し押さえが出来ない場合、他にどんなものなら差し押さえの対象とすることが出来るのかという点について解説していきましょう。

差し押さえが出来る代表的なものは、銀行口座、給与、有価証券、生活必需品以外の金銭価値のある嗜好品、自家用車、所有する住宅及び土地、貴金属など非常に多岐にわたります。

つまり、預金口座に1円も入れていないからという理由だけで差し押さえを回避することは不可能であり、一般的な差し押さえの流れは、口座差し押さえが初手、ダメなら給与差し押さえ(給与額の4分の1まで)、それもだめなら有価証券の処分、それもなければ自動車や自宅に所有している価値がある物を処分、それもなければ自宅の売却という順番で、果てしなく差し押さえが続きます。

通常の差し押さえでは、そこまで行くことは稀で、ほとんどの場合、給与差し押さえでなんとかなります。

口座差し押さえを受けるとどういうことになるの?

さて、口座を差し押さえになると、具体的にどのようになるのかということですが、それほど深刻なことにはならないというのが実情です。無論、債務の金額が莫大であればその限りではありません。

まず、通帳に半角カタカナで「サシオサエ」という文面が記載され、いくら返済に充てられたかが記載されます。

口座差し押さえを知っておくうえで重要なポイントは二点。一点目は、今ある預金額以上の差し押さえはされないということです。もう一点は、債務が残っている場合は、同じ口座で何度でも差し押さえが可能だということです。

口座差し押さえは、預金額をマイナスまで落とすことは出来ません。例えば、預金が50万円あり、債務額が200万円だったとしましょう。

その時、口座差し押さえによって残高がマイナス150万円になるようなことはなく、預金額が0円になり、150万円の債務が残り、ある種の待機状態になります。

その後、預金が増えた時に、もう一度差し押さえがおこなわれ、再び預金から徴収されるという仕組みになります。と言っても多くの人は、預金したところでまた全て返済に充てられるのが分かっているので、その行動はとらないことが多いです。

直接返済すればそれでよし、「どうせ預金してもそのまま取られるだけだから」と考えて、滞納を続ければ、別の財産が強制執行で処分されるだけです。

口座差し押さえは解除することが出来ないのか

例えば、差し押さえになった口座は公共料金の支払いに使っており、預金が0になると困るというケースも有ります。

この場合など、どうしてもある程度のお金を銀行口座に残しておく必要がある場合は、口座差し押さえを解除することが出来ないのでしょうか。

結論から言うと、口座差し押さえ自体は解除できませんが、差し押さえ額を減らし、分納という手段で少しずつ返済するように変更することは出来ます。

こういった部分はある程度融通を利かせることが出来ますが、差し押さえになるということは、前提として長期間の滞納があるということなので、滞納者に非があるということで、譲歩できる部分は限られています。

分納処理で少しずつ返済できるように交渉することは出来ますが、これを滞納した場合、相手側は容赦しません。公共料金が支払えずインフラが止まろうが、預金の全てを差し押さえるでしょう。二度債務不履行になったその時には、もはや慈悲ありません。分納をするなら絶対に滞納しないよう気を付けましょう。

差し押さえの期間はいつまで?別の銀行を利用できるか

口座差し押さえになると、いつまでそれが続くのかと思ってしまうでしょう。結論だけ言ってしまえば、口座差し押さえには期限がありません。

基本的に、滞納していた債務の全てを返済し終えるまで、口座差し押さえが解除されることはありません。

債務金額が大きいと、その口座はいつまで経っても差し押さえが続き預金を増やすことが出来ないため、多くの人は、返済しきれないほどの口座差し押さえ債務になった瞬間、その口座の使用を中止します。そして、他の銀行口座を開設すればいいかと考えます。

しかし、口座差し押さえはそれほど甘いものではありません。入金がなくなり、差し押さえがうまく行かなくなると、債権者は再度財産調査を行います。そして、債務者がどの銀行にいくらの預金を持っているかを調べ直します。

それによって、たとえ別の銀行に預金を移し替えていたとしても、そこで再び差し押さえ命令が出るので、結局同じことになります。つまり、「口座差し押さえが出たから銀行を変えてやり過ごす」という手法は通用しないのです。

時効にすることもできない差し押さえの永続性

金融を学んだことは無い人はこう考えることもあります。「犯罪に時効があるように、借金にも時効があるんだから、返済しなければいつか時効になるんじゃないの」ということです。

確かに、債務契約には時効が存在します。その期間は5年または10年と比較的短いですが、例えば誰かにちょっとお金を貸していて、うっかりその事実を忘れていたりすると、案外あっさりと過ぎてしまうものです。

しかし、差し押さえには時効は存在しません。正確には、時効になる期間のカウントが、差し押さえ命令が出た瞬間にストップするのです。

債務の時効が成立するためには、いくつかの条件が必要です。その中に、債権者が期間中に催促の行動をとっていないというものがあります。時効になるには、債権者(お金を貸している側)がその契約のことを認識していないことが必要なのです。

要は、「お金返して」と債権者が主張し続けている限り、いくらしらばっくれていても時効には絶対にならないのです。

未来に入金される預金を差し押さえることは出来ない!

最後に、口座差し押さえが出来ないお金について解説していきます。それが、「将来預金」です。

将来預金とは、債務者の口座にこれから入金されるであろうお金のことで、これに対して差し押さえをすることは出来ないようになっています。

例を挙げると、現在15日だとして、25日に振り込まれるであろう給料分の差し押さえは出来ないというようなものです。つまり、いくら確率の高い未来のことであっても、現時点で確定していない預金については、いかなるものであっても差し押さえできないのです。

このことから、次のポイントが非常に重要になってきます。

差し押さえをするときには差し押さえ命令の通達日時が極めて大切!

これは、口座差し押さえをする方もされる方も絶対に知っておくべき重要な内容です。

銀行預金の差し押さえが出来る金額は「裁判所から差し押さえ命令が銀行に通達された時点での預金金額だけ」ということです。

例えば、差し押さえ命令が10日に銀行に伝わったとしましょう。その時点での債務額は100万円、債務者の銀行には10万円が入金されていたとしましょう。12日に、債務者の差し押さえになった口座に200万円が振り込まれたとしましょう。その時、銀行側が差し押さえていいのは、10日時点で預金されていた10万円のみなのです。

差し押さえ命令が通達されてから入金されたお金は、あくまでその人の物であり、「金が入ったのか?ならそれも没収だ」とはならないのです。

これは債務者、債権者両方にとって極めて重要なファクターになります。なぜなら、債務者にとっては差し押さえ以降に入金された金額は自由にできるのだから、できるだけ早く、具体的には大きな入金がある前に差し押さえてくれればありがたいし、債権者にとっては、相手から大量に資金を回収するためには、対象者の預金がたくさんあるタイミングで差し押さえ命令が執行されるのが望ましいからです。

ここから、債務者と債権者の戦いが始まります。債務者は銀行の入金に合わせて、預金額を調整します。債権者は給料日や決済日などの、まとまったお金が動く日を差し押さえ実行日に指定し、債務者の資金の引き出しを阻止しようとします。

口座差し押さえは、こうした問題点ともいえる部分もあります。もしあなたが債権者の立場なら、差し押さえできるのは、命令が執行されたときの預金額だけであるということと、差し押さえ命令は繰り返し出すことが出来るということを覚えておきましょう。

もし債務者の立場なら、債権者が差し押さえをしてくるのは給料日または月の頭が多いこと、差し押さえを口座入金せず回避することは事実上不可能だということを知っておきましょう。

閉じる
閉じる