借金の肩代わりはするのもさせるのもダメ!発生する問題を解説
どうしても借金が返せないとなった時に、最後の手段は債務整理をすることですが、その前に第三者に借金を代わりに返済してもらえるケースがあります。
債務整理をしなくて済むので、債務者にとって非常に助かる行為でもありますが、借金の肩代わりは、肩代わりする方にもされる方にも両者にとってデメリットがあります。
今回は、借金の返済について、保証人制度とあわせて解説していきます。
肩代わりする側は保証人と連帯保証人の違いを知っておこう
まず、誰かの借金を肩代わりする人の立場から見ていきましょう。借金の肩代わりには大きく分けて2つのパターンがあります。
1つは、いきなり何の前触れもなく「借金の肩代わりをしてほしい」と頼まれ、善意(親切心)で代わりに返済するケース。もう1つは、事前に契約を取り交わすケースで、「保証人・連帯保証人」として種類契約を結んで肩代わりする義務を持つケースです。
親切心で肩代わりするのは、信頼している者同士で、一時的に当座をしのぐといった目的で借金を肩代わりし、肩代わりしてもらった人が、した人に後日その分を返済するというケースです。
このケースでは両者の関係が良好であることが多く、それほどトラブルにはなりません。また、肩代わりする金額も小さいことが多く、言ってみれば、「ちょっと資金が足りないから立て替えておいてほしい」といったニュアンスでの肩代わりになります。
保証人や連帯保証人になった場合の肩代わりは、債務者の返済義務がそっくりそもまま保証人の方に来るので、金額も大きくなりやすいうえにトラブルも多くなりがちです。
もとはと言えば、返せなくなるほど債務が膨らんだ当人に問題あるのですが、保証人や連帯保証人のこともよく知らずに保証人契約を取り交わしてしまう人も少数ですが存在します。このような場合は言い方は良くないですが、金融業界には自業自得だと判断されます。
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似ていても違う?保証人と連帯保証人の違いとは
保証人や連帯保証人になるには、ある種の覚悟が必要です。それは、被保証人と運命を共にするという覚悟です。
例えば、あなたが信頼する友人が事業を立ち上げるからということで連帯保証人になるとしましょう。その人は絶対に迷惑はかけないと強くアピールして連帯保証人になってくれと頼んでくるでしょう。それならばとあなたは保証人契約を結んだとします。
その後、その友人は事業に失敗して多額の借金を作って消息を絶ってしまいます。すると、その友人が作った借金はあなたが返済する義務があります。簡単に言えば、これが保証人制度の概要です。
つまり、誰かの保証人になるということは、その人の借金を全て背負うということと同義なのです。では、保証人と連帯保証人は何が違うのかということになります。
- 催告の抗弁権 債権者の催告(返済してくれという依頼)に対して、債務者本人に請求するように抗弁(反論)出来る権利
- 検索の抗弁権 債務者が返済出来る財産があるにもかかわらず返済を拒否した場合、債権者の差し押さえを優先的に債務者に向かわせることが出来る権利
- 分別の利益 債務者の債務を複数の保証人で均等に分けることが出来る権利(複数の保証人・連帯保証人が必要)
この中で、特に重要なのが1つ目の催告の抗弁権です。保証人と債務者は債務に対して同様の返済義務を持つのですが、それはあくまで「債務者が返済できない状態」の時に保証人が代わりに返済する義務を負うのです。保証人が返済できない、つまり処分できる財産が無い、または既に処分できる財産はすべて処分したが、まだ債務が残っている状態で、初めて保証人の方に催告が行くのです。
検索の抗弁権は、簡単に言えば、「保証人に対しての強制的な差し押さえを防ぐ」ための権利です。債権者は、債務者が返済できないときに強制執行(差し押さえ)を行う権利があります。この差し押さえをする対象は、返済義務がある債務者本人でも保証人でもいいわけですが、保証人は差し押さえ要求に対して、「先に債務者の差し押さえをしなければ、自分に対しての差し押さえは認めない」と合法的に主張することが出来ます。
債権者はこの権利を行使された場合、債務者から先に差し押さえをしなければ、保証人に対して差し押さえは出来なくなります。これも保証人を守る権利です。
分別の利益は一番簡単です。残っている債務を保証人の人数で頭割りする権利です。権利というよりも、例えば、300万円の債務があり、保証人がABCの3人いるとしましょう。このうちBが返済できないと主張しても、保証人ACが分別の利益を行使すれば、ACで150万円を返済するのではなく、払えないと主張したBにも強制的に100万円の返済義務を負わせることが出来る(ABCで100万円ずつ返済する)ことが出来るという権利です。
分別の利益は保証人を守るというよりも、保証人同士の不当な扱いを防ぐという意味合いの方が強いといえます。
連帯保証人は今後の人間関係を歪めてしまう!
さて、保証人はある程度自身の財産を守る権利が確立されていますが、連帯保証人はそうではありません。連帯保証人は、いわば、「債務者がもう1人増える」といったニュアンスに近く、その義務は債務者(契約者)とほぼ同様です。
連帯保証人は、保証人の際に認められていた3つの権利がどれ一つとしてありません。どういうことかと言うと、催告の抗弁権が無いので、債権者が先に連帯保証人のところにして借金の返済を要求すれば、契約者よりも先に返済しなくてはいけません。
検索の抗弁権が無いので、連帯保証人が、契約者の財産を調べるように債権者に要求することもできません。分配の利益もないので、借金の返済割合が、契約者1割に対して連帯保証人9割になったとしても文句が言えません。
特にトラブルになりやすいのが、連帯保証人契約を結んだあと、借金をした契約者が消息不明になり債権回収不可能になると、連帯保証人にその借金全額の返済義務が生じる点です。
そうなれば、契約者と連帯保証人の縁も切れますし、連帯保証人は借金の返済を断ることが出来ないので、最悪破産してでも返済しなくてはいけなくなります。当然、その恨みが契約者へ向かうため、人間関係は大きく変化します。
お金を貸す際は返ってこない前提で貸すべき?
連帯保証人契約を結ぶのは、並大抵の覚悟ですべきではありません。その相手の人生を背負うくらいの気持ちが無ければ、後悔するのは自分です。相手が友人だからといった軽い気持ちで保証人を請け負ったばかりに、金も友も失ったという例は数えるのが馬鹿らしくなるほど存在しています。
誰かに金を貸すのも連帯保証人契約を結ぶのも、心構えとしては金銭を相手にあげるつもりで行うべきものです。
それが出来ないのであれば、金銭の貸し借りを行うものではありません。
連帯保証人になる場合は、必ずいくら借りるかを厳密に決めて、契約書を確認するようにしましょう。知らない間に大金を借金されていたというのは、もちろん相手が問題なのですが、契約の確認すらしない連帯保証人は、愚かだと嘲笑されるだけで同情などしてもらえないでしょう。
借金を肩代わりしてもらう側はどんなデメリットを背負うのか
借金を肩代わりするときは、保証人と連帯保証人などの制度があり、十分注意しなくてはいけないということは理解できたと思います。
ここからは、借金を肩代わりしてもらう方の立場で解説していきます。当然ですが、借金を代わりに返済してもらえば、その人に借りが出来てしまうので、返済トラブルも多くなります。
連帯保証人や保証人の場合、そちらに返済義務が移ることはありません。あくまで自分の借金を代わりに返済してもらったときと、保証人制度で返済してもらったときではペナルティの内容が変わります。
保証人も関係なく、単に一時的に借金の肩代わりをしてもらっただけの場合は、その人に代わってくれた分のお金を返すだけで済みます。しかし、保証人の返済はその人にお金を返す義務が発生しない代わりに、契約者の信用情報に「代位弁済」という記載が追加されます。
代位弁済とは、本人が債務不履行に陥り、第三者に返済を委託した場合に記載される情報で、これが記載された者の信用が大きく悪化します。
代位弁済については後述するとして、借金の肩代わりのデメリットは、この点と、契約者の保証人に対しての信用力の低下が挙げられます。
一度でも保証人に借金を肩代わりさせると二度と受けてもらえない?
保証人契約は同じ相手と何度でも結ぶことが出来ますが、通常そういったことはほとんどありません。なぜなら、一度でも借金が返せないという事態になると、多くの人は、その人の保証人にはなりたがらないからです。
そもそも、保証人(連帯保証人)とは、借金を肩代わりしてもらうために居るものではなく、契約者の信用を底上げするために居るのです。つまり、契約者1人だけの債務契約だと信用してくれない相手でも、連帯保証人を付けるならば、貸し倒れになりにくいと判断して、債務契約を結んでくれるという目的で利用する制度なのです。
前提として、多くの貸金業者が保証人を求める場合、確実に債権の回収をするためなので、連帯保証人を要求してきます。
そして、実際に探してみればわかりますが、自分の借金を増やすと同義である連帯保証人になってくれる人を見つけるのは、極めて難しいのです。高額宝くじに当たるような可能性と言えば、おおよその難しさは伝わるのではないでしょうか。
運よく保証人になってもらい、縁を切りたくないのなら、その人に極力迷惑をかけない(肩代わりさせない)ようにしなくてはいけません。どんなに優しい人でも、多大な借金を押し付けられてまで付き合おうとは思わないのです。
借金の肩代わりは金融トラブルなの?代位弁済について解説
借金を肩代わりしてもらうと、その事実が信用情報機関に記載されるのですが、これが記載されると当人にはどのような影響があるのでしょうか。
信用情報機関に記載される「代位弁済」という情報は、今後5年間にわたり、貸金業者からの借り入れ、ローンの契約、クレジットカード利用などに大きな制限を課します。
この情報は、5年間何をしても消えることはなく、その間に上記の行為はほぼ全て出来なくなります。借り入れは審査で断られますし、ローンも同様、クレジットカード契約も新規にできなくなり、現在使用しているカードも利用停止になります。
代位弁済のほかにも、長期間借金の返済が期日を守れなかった時に記載される「延滞」、借金が返済できなくなり合法的に借金を減らす「債務整理」などをすると、同様に5年間同じような制限が課せられます。
借金の肩代わりをしてもらうのは、こうした強烈なデメリットを受けます。何とか自分だけの力で返済できそうなときは、そうした方が後々のためには良いでしょう。